人力による農業の限界についての考察w

今回のハノイ訪問目的の一つであるフランジアは、先日もベトナム法人と日本法人のCEO、COOが揃ってカンボジアの地雷原と農場の視察に来てくれた。やっぱこれからは途上国×農業×ITだよね〜なんていう話で盛り上がりっぱなりの我々ですが、その中でもどの部分にフォーカスすればいいんだろうなんてことで、ベトナム法人CEOのカズちゃんと喧々諤々やってたんだけれど、改めて農作業を数字に落としながら考えてみると「完全に人力では不可能ミッションですな」という結論に落ち着く結果となった。

こちらはカズちゃんのブログ
http://www.offshorelab.com/2014/11/26/global-haihanchiken/

うちの会社(HUGS)では昨季は約1,000ヘクタールという規模のキャッサバ農場を運営していたのはこれまでにも何度か触れてきたけれど、もう少しその規模をわかりやすく説明する方法がわかったので、早速ちょっと紹介してみたいと思う。

通常、キャッサバを植えるには日本の畑にもよくあるような畝を作る。この畝の幅が約1メートル。1ヘクタールっていうのは100メートル四方だから、幅1メートルで長さ100メートルの畝が100本あることになる。100メートル×100本なので畝の総延長は10キロ。

1000ヘクタールとなると、畝の総延長は10キロ×1000なので1万キロということになり、なんと地球4分の1周分、北極から赤道までの距離に及ぶキャッサバの植わっている畝を人力で管理していたことになるw

畑の中なのでもちろん泥濘んでいたり、凸凹だったり、作物や雑草が生えていたりして非常に歩きにくいんだけど、ここを人が荷物を担いで行ったり来たりしながらキャッサバの苗を植えたり、除草作業したり肥料を撒いたりしていたわけですね。作物が茂っている状態の時の畝と畝の間は、僕なんか200メートルを普通に歩くだけでも相当キツいんだから、背中に除草剤の噴霧器とかの荷物を背負って作業しながら歩くとなると、そりゃぁ誰もやりたがらんよな。

ちなみにカンボジアにはキャッサバ畑だけでも約40万ヘクタールあるそうだ。これは全農地面積のたった5%。これを先ほどの計算方法で畝の総延長を算出すると400万キロ。なんと地球と月5往復分だwww で、カンボジアの農業就業人口が約500万人と推定されているので、きっかりその5%がキャッサバ事業に従事していると考えると25万人。各自16キロの畝を管理することになるってわけだけれど、多分っていうか絶対にちゃんと管理しきれるはずがないということは、一度でも超クソ暑いカンボジアの農場に訪れたことが有る人ならばすぐに分かっていただけること請け合いだ。

というわけでこんな単純な計算でも、今も増え続けるキャッサバ畑(もちろん他の作物の畑も増えている)を人力で管理出来るはずがないということがわかるわけで、今のままの安い労働力に頼ったカンボジア農業では、近い将来色々なことに限界が来るのは火を見るよりも明らかだ。ということで、やっぱ機械化効率化の道を模索するのが王道っぽいですね。

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AGRIBUDDY ベータ版リリース完了!

僕の長男の1歳の誕生日だった昨日、この1年半に渡って試行錯誤しながら開発してきた「途上国向け農業データ管理サービス」AGRIBUDDYのβ版を、Google Playからリリースすることが出来ました。

僕がカンボジアに居を移したのが2010年。その翌年2011年に、現在プノンペン在住でで一緒にHUGSの共同代表をやっている黒川や応援してくれる仲間たちと共に会社をカンボジアで創業した。HUGSで真っ先に取り組んだ事業が農業、農地開墾から始めて大規模農場を運営するという戦略のもと、カンボジアのジャングルの中を走り回って候補地を探し、1000ヘクタール(ディズニーランド20個分)の広さの森林を切り開いて農地にするという事業を開始した。結果は、いかにもカンボジアらしい「全く理解不能だけど、誰にも責任の所在が無いからゴメンね」的な騒動に巻き込まれて、大金を突っ込んで開墾した土地が使えないというとんでもない事態に陥った。

そこで辞めるわけには絶対にいかないので、今度は森林を開墾して農地にするという戦略を変更し賃借出来る大規模農場を探しだして、そこで同じく1000ヘクタール近いキャッサバ農園の運営を開始した。一つの区画を25ヘクタール程度(それでもディズニーランド半分の大きさ)に分割し、全部で数十区画ある農場を数十人のファームマネージャーがそれぞれコントロールしながら、数百人の労働者を使って同時進行で様々な作業をする。農場が大きく区画数も多すぎて色々なレポートを聞いても実際にどこで何がどれくらい行われているのか、わかっても理解出来ないというジレンマに、一体みんなどうやって農場をコントロールしているんだろうという疑問を感じながら運営を続けた。正直な話、自分が自分自身の農場内のどこに立っているのか、正確な位置を把握することすら不可能だった。

そうこうしているうちにタイ東部とカンボジア西部を襲った大雨洪水で、地平線のそのまた向こうまで続くうちの農場も大きな被害を受けて、現場から送られてくるメールはまるでスパムメールの如く何通にも分かれて各区画ごとの被害の様子の写真が添付されていた。

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どの写真もこの写真も全て水没した農場の写真。

スクリーンショット 2014-11-18 7.02.56 PM

ヒドイことになってるってことは良くわかったが、実際のところどの場所がどれくらい被害を受けたのかわからない。「大変だ、えらいこっちゃ」はということだけはよーく理解できる。でも全然正確な数字やイメージが掴めない。地図を作って状況を把握して報告しろと言ってみたところでこのレベルが限界だった。

スクリーンショット 2014-11-18 7.03.30 PM

こんなことでまともな事業なんて出来るはずがないと思った。

「どうして誰もこの状態に疑問を持たないんだろう?なんで誰も不便を感じて、これじゃダメだとか思わないんだろう?」

いや、そんなはずはない。なにかイケてるサービスが有るはずだろうと思って探してみた。いくつか僕のイメージに近いようなものが有ったけれど、たいしたこと無い割には利用料金がえらく高かったり、内容が複雑すぎて使う前に学校に通わなきゃならないんじゃないかって感じだったり、どうもしっくり来るものがない。しかも、色々と調べていくうちに、そもそも論として農業の世界はIT化がむちゃくちゃ遅れているということがわかった。IT化が進んでいるとしても、それはそれでいきなり植物工場のような最先端技術を駆使し過ぎていて、完全に別次元の事業の話になってしまっている。

早い話が、イケてる連中が使いやすくてユーザービリティーに優れているようなサービスを構築する土壌が、農業の世界には全く存在してなかった。強いて言えばシリコンバレーで良さそうなサービスは誕生しているが、残念ながら僕たちが農業をやっているような途上国では上手く使えそうにもなかった。なぜかって?先進国と途上国ではあまりにも前提条件が違いすぎるからだ。働く人々の教育水準もモラルも全く違えば、必要とされることもまた違う。しかも先進国ですらイケてるサービスが見当たらない中、インターネットに接続したこともなくスマホもPCも持っていないような途上国の農家向けのサービスなんて存在するはずも無かった。

だったら自分たちで作ればいいんじゃないか?自分たちが困っていることは、他にも同じことで困っている人が絶対に居るはず。こんなままで途上国の人々が行き当たりばったりで、データも蓄積されないような農業を続けていても絶対に生産性が上がるはずもない。誰もやっていないところに新しい仕組みを創造することが出来れば、それはものすごい価値を生むんじゃないだろうか?そうやって構想をスタートさせて生まれたサービスがこのAGRIBUDDYです。

今、ようやく僕たちはスタート地点まで辿り着くことが出来ました。当初は5年でカンボジアでのビジネス立ち上げを成功させて、また他の国に行こうと考えていた僕の目論見は見事に途絶え、成功どころか失敗と絶望と悔しい思いの繰り返しの4年間を過ごしてきました。でも僕のチャレンジは終わらない。また一つ、新しい挑戦の始まりです。さぁ、楽しもう!

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働きたいわけが無い、とぶっちゃけ思います。はい。

日本と同じく農民の国でかつ仏教国のカンボジアは、日本の風習と同じように正月やお盆を祝う連休がある。やはり文化や宗教は「食うこと」と共に生きてきたんだなと思うのは、こういう行事の時期と農業に関わる天候の節目が見事に一致しているからだ。カンボジアでは正月が4月くらいにあって、これは雨季の始まりの節目。そしてお盆のある9月末からが最も雨量が多い時期。さらには水祭りというのが11月初旬に有って、これが雨季の終わりの合図だ。なんでもかんでも、兎角スケジュールがズレまくりで、時間単位の約束がカレンダー単位で遅れることが日常茶飯事のカンボジアなのに、この祭事と天候の関係は見事なまでにリンクしている(笑) やっぱり昔の人の生きるために蓄積された知恵というのは素晴らしいですね。

それはともかく、9月末のお盆の3連休から怒涛の(というか悪夢のw)祝日コンボが始まり、10月は毎週半ばに祝日が挟まり2働1休という体制に強制的に追い込まれ、最後の仕上げは水祭りの3連休+週末+独立記念日+代休という、むしろ休みの合間に仕事をするというような状態になるのは本当に勘弁してもらいたいが、これも郷に入れば郷に従えという、昔の人の言葉に忠実になるほか無さそうだ。

と、まぁそんな感じであっという間に加藤さんの東大での講義が来週となり、資料作りも急がなくてはならないので、先日は『休日にも関わらず』ソチアットを呼び出して実際の作業現場の映像なんかを取りに農場に出かけたところ、さすがのカンボジア人ですら若干長すぎる連休を持て余していたようで、僕からの呼び出しに喜んで飛んできてくれた(笑)

ちなみに空撮も慣れてきて図に乗り過ぎるとこんなことになります。。。

今回の映像は、カンボジアで最もイケてる映像スタジオ、Studio Zarusovaを営む高松クンにお願いして製作してもらうことになったんだけれど、車から降りた瞬間に頭皮がチクチクするような強烈な日差しの中、農場での撮影は事前の想像以上にキツい作業となった。「こりゃあ、カンボジア人の労働者じゃなくてもサボりたくなりますよね・・・」とは彼のセリフ。そう、そうなんだよね。僕もいつも「なんでもっとちゃんと仕事してくれないんだ」とか、「ちょっと目を離すとサボるくせに、賃金上げろばかり言うな」とか文句ばかり言っているけれど、実際に現場に行くととてもじゃないけれど働く気にもなれないような過酷な暑さと仕事のキツさで、いつも心のなかで「生意気言ってごめんなさい、僕にはとても同じことするのは無理です」と謝っている。

正直な話、こんな安い賃金であのキツイ日差しと暑さの中、掘っ立て小屋以下のサバイバルテント生活を継続しながら、一生懸命働くことに喜びを見いだせる人なんてこの世に存在しない気がする。

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でも僕たちはその人達に頑張ってしっかりと働いてもらわなくてはならない、という有る意味相反する状況をコントロールしていかなければならない。これが途上国で農業を営むということであり、先進国の連中の生活はこのような人々によって支えられている。どうやってうまく働いてもらうか、どうすればそれをしっかりと管理できるか、どうやって彼ら労働者の生活が少しでも向上するようにしながらも、コストが上がって利益を圧迫しないように出来るのか。

ここに僕たち先進国から来た人間が途上国農業に関わる理由がある。そして僕たちが農業にITを持ち込む理由がある。その一つの回答に向けてこれからもチャレンジしていきたいと僕たちは考えています。

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