嫁が病院で「HIVです」と宣告された話

昨夜、インドに出張中の僕のところにカンボジアに居る妻から電話が掛かってきた。とりとめの無い話の後に彼女は意を決したように僕にこう言った。

「先日、身体が痒くて心配だったから近所の病院に行ったら血液検査されて、HIVに感染してると言われた」と。

普段からカンボジアの病院(というか、あらゆるカンボジア人知識職の人々)を全く信用していない僕は「いや、そんなワケ無いやろ」と言ったのだが、普段気丈で涙を見せない彼女が電話の向こうでむせび泣いている。日本ですら近寄るだけで感染するのではないかと思っている人がまだ居るくらいのHIV / AIDSに関して、カンボジアのデリカシーの無い人々の対応の仕方を知っている彼女は、死に対する恐怖もさることながら、周囲からひどい差別を受けることについても凄い恐怖だっただろう。そして僕や家族に去られることも。

そもそも、どんなに考えても僕も妻もHIVに感染するような行為をした記憶がないし(結婚時にも念のため検査したし)、彼女から話を聞く限り1時間以内に結果が出るような非常に簡易な検査だったようなので、カンボジアのローカル病院のレベルから考えても検査精度が高いはずがないというのが僕の見解だった。とは言え、僕もHIVに感染する経路の可能性とか、陽性だという結果が間違って出る確率などについて詳しいわけでもないので「とにかくもう一度ちゃんと検査しよう。もし本当にHIVだったとしても僕は君から離れることはないし、今は色々な薬もあるから心配することはない。」と言って電話を切った。

僕がこんな重大な話に対しても落ち着いて対応出来るのは、上にも書いたように全く病院を信用していないからだ。なんてったってカンボジアのローカル病院ってのはこんなレベルだ、信用するほうがどうかしている・・・。
・『食中毒で入院しました』
http://ken5.jp/kengo/archives/2354
・『無免許医が使用した汚染された注射針によってHIV集団感染の疑い、陽性反応100人以上』
https://www.cnn.co.jp/world/35058162.html

さっそく「HIV 検査 偽陽性」としてググってみると、やはり一定の確率で迅速簡易検査(スクリーニング)の場合は偽陽性反応が出てしまうらしい。この即日スクリーニングの時点で陽性反応になるのは全体の1%、そこから確認検査(1週間位掛かる)をやると陽性反応のうち77%は偽陽性。即ちスクリーニングで陽性だと判断されても、その後に正確な検査をすれば10人中7〜8人はHIVではないと判断される、というデータが示されていた。

陽性の場合は必ず確認検査(NAT検査とHIV・ウエスタンブロット(WB)検査 )で本当の陽性か偽陽性(陰性なのに陽性と誤ってでてしまうこと)を調べて鑑別する必要があります、とネットで調べればいくらでも出てくるわけで、医療機関を名乗っている以上、最低限知っておくべき内容だろう。

即日スクリーニングの時点での陽性反応で「あなたはHIVです」と医者が断言してしまったら、77%の確率で間違った告知をしてしまうということになるので、絶対に「マトモな医療機関」ではやらない行為だ。てか、やってはならない行為だ。しかも妻も病院にHIVに感染するような行為をした記憶が無いと伝えたらしいが「ネイルサロンで甘皮を取ってもらったときに出血したことがある」とか「ニキビをサロンで潰してもらったことがある」とか言ったところ、そこで感染したに違いないと言い切られたそうだ。

僕の見立てでは確率的にも、自分たちの行動的にもHIVに感染している可能性は限りなく低いのだけれど、とは言えスクリーニングで陽性反応が出てしまっている以上は確認検査をしなければ「絶対の安心」はできない。さてどうしようかなと一晩中思案していたのだが、数日眠れない夜を過ごして悶々としていた妻は、又しても他の病院に検査をしに行ったらしい。いわゆるセカンドオピニオン受診ってやつですね。

で、結果はスクリーニングの時点で陰性。偽陽性が出る可能性は一定数あるが、反対に偽陰性が出る可能性はゼロだ。スクリーンショット 2018-01-31 19.21.10

いや、まぁそらそうやろう、という結果で良かったのだけれど、妻が生きた心地もせずに過ごしたこの数日は一体なんだったんだろう。もし彼女がどうしても僕に言い出せなくて、置き手紙でもして命を断ってしまっていたら取り返しがつかない。というか、もしかしたらこんな間違った告知を信じて本当に命を断ってしまった人が過去にいたのかもしれない。無知な人は無邪気に他人の人生を奪っている。そしてまた無知は簡単に人生を奪われることにもなる。だから、常にどんなときも自分の頭で考えて行動出来る力を持っていなければならないと改めて強く思った。

それにしてもしかし、嫁に「HIVに感染してしまった」と告白されるという経験をする男性は、一体世の中にどれくらい居るのだろう?w 相変わらずネタに困らん人生を歩ませてもらっているが、僕以外の人は巻き込まないようにネタの神様にお願いしたいところではある。でも、本当に間違いで良かったわ・・・。

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