kengo KITAURA について

AGRIBUDDY LTD. CEO 使用言語 : 大阪語北摂弁、訛った英語、通じてくれないクメール語 元なにわの金貸し&なんちゃってレーサー シェムリアップとラーメン&焼肉を愛してやまない永遠の厨二病。ハプニング体質症候群発症中なので、何をやってもネタを仕込んでいるように思われるようです

日本と途上国の農業、それぞれの問題点

今日から8月いっぱいの一ヶ月間はベトナムのハノイで過ごすことにしました。いよいよ佳境に迫ってきたAGRIBUDDYの機能実装完了に向けて、開発速度を加速させるためのチーム作りが主な目的です。とは言え、実際のところは僕が来たところでコードの一つ書けるわけでもないので、あまりエンジニアのみんなにあれやこれや話しかけすぎて思考中断に追い込まないように気をつけようと思っていますw

さて、そんな僕たちAGRIBUDDYの対象ユーザーが暮らすアジア途上国の農業実態を色々なデータを見ながら紐どいていると、非常に興味深いことが見えてきますよ、というのが本日のお話。

まず最初に、ここ数年にわかに活気づいているアメリカの農業系スタートアップ界隈ですが、彼らがターゲットとしている北米の農家(というか農業従事者)はおよそ100万人。世界の耕作面積のおよそ10%に当たる、1億6千8百万ヘクタールという途方もない規模の農地をたった100万人で運営している訳ですね。これを一人あたりに換算すると153ヘクタール(ディスニーランド3個分)の農地が一人の農家によって運営されていて、1ヘクタール(1万平米)あたり1,600ドルくらいの売上になっています。

我らがカンボジアはというと、農業従事者数がアメリカの約4倍程度の380万人。それに引き換え耕作面積は420万ヘクタール程度なのでアメリカのなんと40分の1。同じく1ヘクタールから1年間に生産される作物の価値はおよそ1,200ドル。一人の農家が運営しているのが1.1ヘクタールくらいだから、単純に考えると年商(年収ではない)が1,320ドルくらいになってくるので、やっぱりカンボジアの農家が貧乏なことには間違いがなさそうですね。

カンボジアもアメリカも1ヘクタールあたりの生産価値があまり高くないのは、双方共に低付加価値作物(トウモロコシとか小麦とか米などのコモディティー作物)を育てているからだろうけれど、アメリカはそれを少人数超大規模で大量に生産することによって農家の利益を確保することに成功している。カンボジア(というか途上国はどこでも同じ)では、アメリカと同じような低付加価値作物栽培を人海戦術でやっているのだから、そりゃあこれではいつまで経っても農家が豊かになんてなるはずが無い。

別の意味で農業の問題が色々と取り沙汰される日本はというと、なんと1ヘクタールあたり1万1千ドルを生産しており、これだけ見るとかなりの優等生っぷりを発揮している。しかし別の角度から眺めてみると、薄々わかってはいたけれどやっぱりそうかという問題点が浮かび上がってくる。

農場従事者数 一人あたりの生産価値 ヘクタールあたり生産価値 一人あたり耕作面積
日本 1,898,920 $29,170.27 $11,725.81 2.49ヘクタール
イスラエル 60,544 $120,428.12 $20,059.70 6.00ヘクタール

上記は農業先進国として名高いイスラエルと日本の農業との比較だ。まず農家一人あたりの生産価値を見て欲しい。日本の約3万ドルに比べてイスラエルは12万ドルと4倍もの開きがある。さらに1ヘクタールあたりから生み出される価値も1万ドルと2万ドルでおよそ倍もの差がある。さらにさらに一人あたりで運営している農地面積も2.5倍近い違いがある。これをわかりやすく言葉にすると、こういうことになる。

『日本の農業は、徹底した効率化を追求すること無く、人件費の高い日本人が小さな耕作地を運営しているせいで、平均的な日本人の所得に及ばないような生産価値しか生まないような事業になってしまっている。』

すなわち、日本の耕作面積からすれば農家の数が多すぎるというのが、1つ目の問題点。3分の1まで減らすくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。次に面積単位の生産価値が低いこと。砂漠のど真ん中の、国家予算の60%を国防費用につぎ込んでいるような国ですら、ここまで効率よく農業を行って利益を出すことが出来ているのだから、日本の農家がその半分の価値しか生み出せていないのは、やはり「あまりやる気の無い農家が必要以上にたくさん居座っている」という結論を導き出す他ないんでしょうねぇ。。。

やる気の無い農家が、本気で農業をやろうと考えている人々に農地を託して別の仕事に付いてくれれば、一気に問題が解決へと向かいそうなのだけれど、中々そうもいかない大人の事情ってものがあるのだろう。と、まぁこうやって日本の農業に関して問題点を分析してみても、やはり僕たちが何か出来そうなことはあまり無さそうだ。その点、途上国農業に関して言えば、まずそもそもの人件費が低いので、少しでも付加価値の高い作物を栽培できるようにすれば、少なくとも今の数倍は楽な暮らし(その代わり今よりちゃんと働く必要も出てくるけれど)になるはずだ。AGRIBUDDYのフォーカスはそこに有る。

そんなわけで、話が長くなってしまいましたが、ハノイの皆さん本日よりお世話に成りますので、ぜひよろしくお願いします。

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土地境界線と国境線

日本のそれとは比べ、著しく境界線が曖昧なカンボジアの農地では、ちょっと気を抜くとすぐに横の土地の持ち主が勝手に境界線を数十メートルもはみ出して自分の作物を植え始めたりする。もちろん見つけ次第すぐに地域の長に報告してから、相手の作物を抜き去り、勝手に移動された境界杭を元に戻したりするのだけれど、時にはその場に居合わせた相手との間に不穏な空気が流れたりすることもある。

もちろん誰だってトラブルは嫌だけれど、理由も無く自分の財産である土地を勝手に持っていかれるようなことは避けなくてはならない。幸いにもお互いに武器を持っていない一般人同士だから、今のところ大きなトラブルに発展したことはないが、自分の土地を守るという当たり前の行為に違和感を感じる人は居ないと思う。

ところがこれが、同じように隣の農家とのトラブルでも、相手農家と農地が国境を跨いだ隣国の場合だと、そう簡単には事が運ばない。なんてたって、土地の境界線イコール国境線というわけだから、ちょっとした揉め事でも機関銃を持った兵士が臨戦態勢で吹っ飛んでくる事態に発展してしまう。

そんな時に自国の警察や行政の長を呼んでみたところで、相手は「こちらが国境線を勝手に踏み越えて領土を侵食しようとしている」という無茶苦茶な理屈で、軍人が即射殺も辞さない覚悟でやってきてるんだから、なんの役にも立ってくれない。

日本は全ての国境線が海上に有るために、誰一人として「自分の財産である土地の境界」と他国との国境が同一である人は存在しないわけだけれど、ここカンボジアには(そしてお隣のベトナムにも)そんな微妙な立地に農地を所有してしまっている農家がたくさん居る。

この平和で経済の順調な発展が何よりも重要で、且つ政府間同士の繋がりが非常に深い(というか、カンボジア政権がベトナムの傀儡政権だとすら思われているフシも有る)ベトナムとカンボジアでさえ、今この瞬間にもこんな一触即発の自体が日常的に起きている。

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ベトナムの軍人と対峙するカンボジアの農家たち(Voice Of Americaより)
http://learningenglish.voanews.com/content/clash-vietnam-cambodia-border/2845262.html

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右側がカンボジア、左側がベトナム(Internatioanl Business Timesより)
http://www.ibtimes.co.uk/clashes-between-authorities-civilians-vietnam-cambodian-border-leave-dozens-injured-1508879

僕にはどちらの人々の主張が正しいのかはわからない。ただ残念ながら、双方が正しいということはあり得ない。一方の主張が正しいということは、相手の主張は端から間違っている、というより意図的に財産を奪いに来ていると考えるほかに疑いの余地がない。僕の農地の隣の農家と同じで、何も文句を言われなければラッキーという、浅はかで恥も外聞も無い「やったもん勝ち」のルールで生きている人々は、世界には僕たちが想像している以上に多いのも、これまた残念な事実だ。

僕は戦争なんて絶対に反対だし、誰かを殺したり殺されたりするのもまっぴらゴメンだ。国境なんてむしろ無い方がいいと思っているし、国家やその領土が存在している事自体がややこしい事態を巻き起こしている最大の要因だとすら思っている。ところがこれが僕個人や自分の家族、そして親しい仲間たちという単位で考えてみれば、その財産を不法に第三者に奪われそうになったとするならば、考えるまでもなくそれを守ろうとするだろう。例え相手が暴力をちらつかせてきたとしても。

カンボジアにだって、個人の資産を保護するための法律は存在している。その法を運用するための司法機関も(デタラメだが)存在している。また国家間にも国際裁判所や国連のような機関が存在していて、そこには明確にやってはいけないルールが明記されている。しかしながら、なぜかいつもそれを平気で踏み越えて「文句を言われなければラッキー」、もしくは「多少文句を言われたところで痛くも痒くもない」と考えて色々と仕掛けてくる連中が後を絶たない。

自分たちからこのような不法行為を仕掛けていくのは言語道断だが、自分がやらなければ相手もやってこないというのは幻想でしか無い。だからこそ、相手が仕掛けてきた時にどうすればベストなのかということについては、常に考え続けなくてはならない課題なんだろうと僕は捉えている。

さて、カンボジアのフン・セン首相はオバマ大統領宛に、この国境問題の紛争解決に向けて、1963年に取り決められた国境線の地図を元にカンボジアの正当性を証明してほしいという手紙を書いたみたいだけれど、はてさてどうなることやら。。。

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嘘か真か?夢のスーパー作物

僕たちの農場では現在キャッサバという芋を育てているのだけれど、以前からスイートソルガムという作物にも注目している。このスイートソルガムという作物は、種子に豊富なタンパク質を含んでいる、且つ茎の部分は高い糖度を持っているため絞り汁を発酵させてアルコール(バイオフューエル)を生成することが出来る上に収量が高いという、これからの世界の食糧とエネルギー事情を担っていく存在になりそうな作物だ。

最近僕の知人のカンボジア人農場主がこのスイートソルガムの大規模栽培に向けてテストを開始するということで、話を聞きに行ってきた。するとその人は「日本の企業がインドネシアで大成功させているスーパーソルガムという種類のものを栽培する。茎の部分をペレットにしてバイオマス発電の原料にするために、三井物産が買い上げてくれることになっている」と言っている。なんと、すでに日本企業がインドネシアでそこまでやっていて、三井物産がカンボジアからペレットを買い上げるというようなところまで進んでいたのか!とビックリしたので、ちょっと色々とこのスーパーソルガムについて勉強してみることにした。

スーパーソルガムをやっているのはSOL ASIA HOLDINGS PTE.というシンガポール法人だが、その親会社は株式会社SOL HoldingsというJASDAQ(6636)上場企業だ。数年前まではシスウェーブホールディングスという半導体関連の企業だったそうだが、どうやら経営陣がごっそりと入れ替わってからソルガム事業に着手し、あれよあれよという間にインドネシアで政府が注目するレベルの大成功を納め、今やメキシコなどにも進出する傍らカンボジアにも触手を伸ばしてくるという、破竹の勢いの会社のようだ。

現在の株価が242円で時価総額43億円。えらく成功している割には株価(というか業績)に反映されていないなと思い、過去のIRを色々と調べてみたら去年の7月3日発行の興味深いIRを見つけた。
http://www.sol-hd.jp/pdf/20140703.pdf

要は「ストック・オプションを発行したよ」というお知らせなのだが、これが発行済株式17,933,612株に対して11.16%にも該当する2,002,000株。しかもストック・オプション行使条件が、”平成28年5月31日の間で、一度でも(一瞬だけでも)株価が800円を超えた場合”、及び、”平成27年3月期もしくは平成28年3月期の売上高が24億円を超過した場合”となっていて、なんとも香ばしい素晴らしいゲーム感覚の報酬体系を採用している会社のようだ。

はて、現在の株価が242円となっており、ストック・オプション行使条件(要するにタダで株を大量に貰える条件)には程遠い感じだけれど、実際のところどうなんだろうと思って過去の株価チャートを見てみると・・・

スクリーンショット 2015-06-27 1.00.11 PM
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6636&ba=9&type=6month

超えてるよwww しっかりと、しかもご丁寧にたったの一日だけ800円を超えているwww その後は見事な株価暴落で200円台に突入して以来上昇の気配すら伺えないw

いずれにせよこれで1つ目の条件はクリアしたから、後は来年3月の決算で売上が24億円に達すれば、現経営陣のみなさんは大量の株式を入手する権利を得るわけか。もちろん入手した後も市場での株価が372円を上回らないと、なんの旨味もないわけだけれど、これって株のドシロウトの僕が見てもちょっと色々な妄想が頭のなかを駆け巡るくらい怪しく見えてしまうのに、証券取引等監視委員会とかに調査されたりしないのだろうか?

っていうか、地道な改良が必要で中々思うようにいかない農業の世界と、マネーゲームに見えかねない株の動きをしている「元半導体関連企業」というのが、どうにもしっくりと結びつかないんだけれど、大丈夫なんだろうか?そもそも三井物産が、カンボジアでスーパーソルガムから作られたペレットを買い上げるっていう話も本当なんだろうか?

うーん、もちろんこのSOL HOLDINGSという会社が行っているスーパーソルガム事業がホンモノであり、無垢にこの話を信じてテスト栽培に挑もうとしているカンボジア人が成功を納めてくれるのが一番なのだけれど、どうも色んなことが引っかかってしまうのよね。もちろん僕の調査結果と感想は本人にも伝えたけれど、一度信じちゃった人の気持を変えるのって言うのは難しいし、そもそもこの会社が怪しいと思うのも全て僕の推測の域を出ないわけだし。

日本企業のせいで嫌な思いをするカンボジア人が増えないことを祈ります。

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