アリラン祭

アリラン祭が行われる会場は15万人収容のメーデースタジアム。東京ドームの収容人数は5万5千人、巨大サッカースタジアムで有名なスペインのカンプ・ノウですら10万人ってんだから、やはりこのスタジアムは相当にバカでかいです。IMG_2906IMG_2903

さらに総出演者数は10万人で2007年にギネスブックにも登録されています。さすが国家の威信をかけた祭典の規模は違いますね〜。このバックスタンドだけで2万人の中学生が集められています。IMG_2914
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拡大するとこんな感じwIMG_2908

本番前の肩慣らしですら、すでに圧巻です。

実のところ、このアリラン祭も例のごとく「悪の化身のような大日本帝国」に対し抗日武装闘争を繰り広げ勝利する、という我々とすれば全くありがたくないシーンからスタートするのですが・・・IMG_2920 IMG_2926 IMG_2927 IMG_2928

この際そんな難しいことは無視して、単純にこの素晴らしい芸術を楽しむことにしました(笑)

いやぁしかし当初の期待値が高ければ高いほど、実際に見た時に自分の期待値が高すぎたことに気づいてがっかりすることが多いのが世の中の常なのだけれど、このアリラン祭は僕の期待値を完全に上回っていました。

しかしなんていうか、一致団結ってスゴイですね。IMG_1661 IMG_1664 IMG_1666 IMG_1668

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北朝鮮はカルトの聖地?

「観光をするにあたってお願いがあります。それは金日成主席や金正日総書記、そして金正恩第一書記への我々の忠誠心と気持ちを察していただきたい、ということです。」「決して呼び捨てなどされないようお願いします。肖像画や銅像を写真に撮られるときは、どこか一部分が見切れたりしないよう全て画面の中に収めてください。」「こちらで新聞や書籍などを買われるかもしれませんが、それに主席などのお写真が載っているときは、その写真が折れ曲がったりしないように気をつけてください。また必要が無くなったとしても決してゴミ箱などに捨てたりしないでください。その新聞を包み紙などに使用しないでください。」

ツアーガイドとの旅程の打ち合わせなどのブリーフィングにあたって、一番初めに念を押して言われたのが上記のようなことでした。もちろん僕たちのツアーガイドの二人共、そしてホテルで見かけたその他大勢のツアーガイドやスタッフをはじめとする現地の人々も、みんな左胸に金日成や金正日の肖像画のバッジを付けています。

僕たちが彼らの信仰の対象をどう思っているのであれ、彼らを悲しい気持ちにさせたくは無いですから、僕自身相当に気を使って”普段は何も考えず呼び捨てしている金日成たちの名前”に、彼らと同じように敬称を付けて呼ぶように努力しました。それでも一度は煩わしいのも手伝って「金正日さん」と言ってしまったのですが、やはり相手の顔色がすっと変わるのがわかりました。

と、まぁ要するにそれくらい外国人の僕たちですら気を使わなければならないのが、彼らの信仰の対象である金ファミリーという国家元首なのです。

平壌の街のいたるところには金日成や金正日の肖像画が飾られています。IMG_2860 IMG_2865

銅像のでかさは半端ではなく、軽々しくポーズを取って写真を撮るなんてことはもっての他、銅像に献花した後にしっかりと頭を下げたお辞儀を求められます。IMG_2982

そして市内にはそれぞれなんらかの意味(抗日勝利とか)と、そしてなんらかの記念日(例えば金日成の生誕〇〇周年とか)を紐付けた巨大モニュメントがあちこちに建っていて、どれもこれもスケールが壮大です。IMG_3002 IMG_3003 IMG_3047

極めつけはこれ、太陽宮殿。IMG_2953 IMG_2952

金日成、そして金正日の遺体がそのままの状態で保存されている、バカでかくて超豪華なこの宮殿は、徹底的に管理されていてカメラはおろかコイン一枚ですら持ち込ませてくれない。入り口から数百メートル続く廊下には、これみよがしに豪壮な音楽が鳴り響き、往復分設置された動く歩道上では数多くの軍人・一般人が身動ぎ一つせず粛々と立っている。そして両脇には金日成たちの生前の大活躍がわかる写真の数々。IMG_2954

厚さ20センチはあろうかというような分厚い大理石の扉をくぐり、靴底の泥を落とすための自動ブラシの上を歩き、エアーカーテンで身体の埃を吹き飛ばされて、ようやく遺体が安置されている大広間にたどり着く。ライトアップされている金正日の遺体が入ったガラスケースの周囲を回りながら前後左右4度に渡って深くお辞儀をした後、この部屋を後にすると、今度は彼が生前に使っていたメルセデス・ベンツ、電動カートはおろか、電車の車両や船まで宮殿のそれぞれの広間に持ち込まれて展示されている。

世界の聖地と呼ばれるような場所、例えばバチカンやチベットのポタラ宮、エルサレムの聖墳墓教会や嘆きの壁にも行ったけれど、そのどれよりも強く訴えかけてくるようなこの宮殿の圧迫感ともいえる雰囲気は本当に別格でした。

これはまさに「カルト宗教の聖地」そのものです。国家や国民による同調圧力と周囲の情報からの完全遮断、そしてこのような大量のモニュメントや銅像と肖像、さらに極めつけのこの宮殿の空間はいとも簡単に人の心を持ち去り、そして縛り付けてしまうのに充分すぎる力を持っています。素晴らしい宮殿でしたが、僕は一歩外に出て空気を吸った瞬間に心の底からホッとしました。IMG_2961

僕の感じたもう一つの北朝鮮を知るキーワード、それはこの国の実態が共産主義や社会主義などではなく、金日成とその家系を信仰する「宗教国家」であるということだと思います。僕の全く知らなかった未知の宗教の聖地ど真ん中に来た、そんな感覚の数日間でした。

さて、次回は今回の旅のメインだったアリラン祭について書きたいと思っていますので、またぜひ読んでやってください。

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北朝鮮という国家の成り立ち

そんなわけで、地球上で最もミステリアスな国の一つと言っても過言ではないと思われる、北朝鮮に行って来ました。IMG_2868

入国してからもツアーガイドがずっとマンツーマンで張り付いていて、日程管理や行ける場所も全て予め決められている。その他にも「各部屋に盗聴器が仕掛けられているらしい」なんていうようなもっともらしい噂もあったりしていたので、空港ではツアーガイドという名の公安部員や工作員のような、キツい目つきの人たちが僕たちの到着を待っているのだろうなと思っていました。IMG_2858

平壌路線の出発地となる北京空港からは数名の「北朝鮮(金日成)バッジ」を胸に付けた人々と共に、数多くの欧米人や日本人が飛行機に乗り込み、僕の想像以上に北朝鮮に渡航しようとする人が多くてビックリしたのですが、それにも増して僕を驚かせたのは実際に空港で僕たちを待っていたツアーガイドの方々の、あまりにも普通、いや、むしろ素朴で優しそうな感じに思いっきり肩透かしを食らった感じがしました。

えーっと、ここで北朝鮮国家の成り立ちを簡単に説明したいと思います。っていうか、これがわかると色んなことが理解できるようになりました。まず1910年に大日本帝国政府は当時の大韓帝国首相と調印を交わして韓国を併合し、朝鮮半島は正式に日本の一部となります。しかし、もちろんそれに韓国の国民全てが大賛成で有ったわけもなく、一部の不満分子はゲリラ戦などを通して日本政府に対して独立運動、いわゆる抗日闘争を続けます。その抗日闘争の英雄の一人、僕たち目線で考えると「反政府ゲリラ」のボスの一人こそが北朝鮮建国の父、金日成です。

結局日本は1945年の8月に連合国軍に敗戦したのですが、その時に朝鮮半島の支配権を失います。そして抗日闘争を行っていた人たちにとっては「とうとう日本を打ち負かした」という事実に結びつき、経緯はどうであれ再び自分たちの手元に朝鮮半島の支配権を取り戻します。特にソ連から近い朝鮮半島北部はソ連政府の覚えがめでたかった金日成が掌握していき、反対にソ連の進出を恐れたアメリカ政府は自分たちの息の掛かった李承晩をトップに据えて38度線で国を分割統治することをソ連に提案し合意します。

なので、北朝鮮という国家の歴史の始まりは抗日武装闘争にこそあり、日本人のことをよく思っていないだとか、反日だとかいうようなレベルでは無い、ということです。

その後、この38度線を挟んで朝鮮半島全土を破壊し尽くした朝鮮戦争が勃発し、最終的にはこれ以上戦争が大きくなってヨーロッパでの東西問題に飛び火させたくない米ソの思惑によって停戦合意がなされるのですが、これも北朝鮮政府に言わせると「あの最強のアメリカ軍を撃破した」となっています。そう、彼らは大日本帝国を40年に及ぶ武装闘争の末打ち負かして独立を勝ち取り、アメリカとその傀儡政権である「南朝鮮」を撃破し謝罪を受け入れて停戦合意をしてやった最強の国家である、という筋書きの上に成り立っています。

ちなみに彼らの中には韓国という国は存在しません。あそこは南朝鮮で、アメリカ帝国主義者の言いなりになっている傀儡政権と、それら邪悪な者達に騙され支配されているかわいそうな同胞が住む場所です。そしてそれら哀れな同胞たちを救うために金日成主席の提唱した主体思想と社会主義を推し進めるために、一致団結して戦い続けるのだ、とそのように教えられている人々が2000万人暮らしている国、それが北朝鮮(彼らは「共和国」と呼んでいる」です。

次回は、金ファミリーに対する国民の崇拝について書いてみたいと思います。

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