3泊4日の洗脳体験

北朝鮮(ちなみに現地の人々は自国のことを「共和国」と呼んでいる)で出会った人々は、ガイドのお二人やドライバーの人をはじめ、レストランや土産物屋その他あちこちで触れ合った人たち全て、非常に気が利いてとても親切で、なんというか節度のある素敵な人々でした。平壌の街は素晴らしく清潔で美しく、あちこちに効果的に公園や森が配置されています。IMG_1680 IMG_2974 IMG_2971

多くの人々は非常に安く利用出来る(5円程度)バスや地下鉄、路面電車などの公共交通機関を利用し、とても質素ではあるけれど僕が今まで見てきたような途上国(貧困国)の人々とは全く一線を画す生活ぶりです。IMG_2869 IMG_2887 IMG_2997

そういった意味で北朝鮮は、街も人々も暮らし向きも多くの日本人が想像しているような国ではありません。どちらかというと想像以上に素晴らしく、下記のようなシステムを聞いている限りでは、ある意味理想を追求していると言っても過言ではありません。

学校教育は12年間の義務教育が全て無料
その教育期間中、全ての人々になんらかのスペシャリティー(アクロバットや楽器、語学や芸術など)を卒業するまでずっと徹底的に教えこむ
無税
病院などの治療は全て無料
住宅費も無料

実際に、このスペシャリティーを教えるという教育が素晴らしく機能しているのは、サーカスやショーを見たり、建築物や工芸品などの見学をしたりするとよくわかります。そして、多くの人びとの細かい気遣いや街の清潔さなども、ある一定以上の道徳教育がなされているからこと出来ることでしょう。IMG_2969IMG_1691 IMG_1689

しかし、です。。。それとは反対に、彼らの歴史に関しての事実認識などは、僕たちの知っている「それ」とは全く違ったストーリーが展開されています。はっきり言ってトンデモ認定ド真ん中な歴史認識です。例えば平壌は5000年!の歴史を誇っていて、古くは中国大陸までをも支配していた、とかを真顔で切々と語ってきます。朝鮮戦争では1953年7月27日にアメリカ軍を降伏させた、と「がっくりとうなだれた米軍将校の写真」や「白旗を上げている米軍の車両」の写真とともに誇り高く説明してくれます。

なぬっ?平壌が5000年前??中国ですら4000年の歴史とか言ってたよな。エジプト文明って何年くらい前だったけ?3000年前?エルサレムの歴史も確かそんなくらいだったよな?・・・なんて思っても、調べる手立てがここにはありません。

朝鮮戦争において、世界で初めて「破廉恥なアメリカ帝国主義の高慢な鼻をへし折って」その強大性の神話を打ち破った、とか言われても、そんなわけ無いやんww あれっ?でもじゃぁなんで朝鮮戦争は終わったんだろう?あの白旗を上げた車に乗って米軍将校が38度線までやってきて、北朝鮮政府と停戦協定をしたのは一体どういう事実だったんだろう?・・・なんて疑問を持っても、ここにはインターネットも検閲を受けていない本も存在しません。

彼らに詳しく聞けば聞くほど、トンデモな内容の回答とおかしな証拠が出てきて、余計に深みにハマる一方なのです。例えばこんな写真とか。。。IMG_1698
これは朝鮮戦争で勇敢に闘う北朝鮮兵たちの写真ですが、構図からしても写真の陰影からしてもフォトショップ系加工でのでっち上げ丸わかりですw

そんなこんなで僕は色々な疑問がありすぎて、しかもそれを一切調べたり反証したりする手立てが無くて、頭のなかがグルグルになって眠れなくなりました。

僕は常に出来る限り両極端に反対の見解を調べて自分なりの正解を探し、バランスをとるように心がけています。ですから、今回北朝鮮に来たことによって、日々自分たちが知らされていること、刷り込まれていることと現実の大きな違いを目にしたり体験したりすることが出来たのは、非常に大きな収穫だったと思います。でも、あの国の中にいる間は、そのバランスを取る、ということが全く出来ないのです。これは本当に危ないです。超ヤヴァイです。たった3日間だったから良かったようなものの、これが1年続いたら調べることを諦めてしまって、人間が変わってしまう自信がたっぷり有ります。

それを北朝鮮の人達は生まれた時から今現在も、あの情報から遮断された空間の中で信じ続けて生きています。これこそが洗脳というものだ、と僕は思いました。と同時に僕は自分で色々なことを調べる手立てを長期間失ったり、もしくは調べることを諦めたりした瞬間から、人間はどこに住んでいたとしても周囲や国家や何かしらの利益に誘導され洗脳されていくのだろう、ということもよく分かりました。だからこそ、これからも色んなことを自分自身の目で見て、感じて、触れて、そして自分の頭で考えながら生きていきたいと、改めて胸に誓いました。

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アリラン祭

アリラン祭が行われる会場は15万人収容のメーデースタジアム。東京ドームの収容人数は5万5千人、巨大サッカースタジアムで有名なスペインのカンプ・ノウですら10万人ってんだから、やはりこのスタジアムは相当にバカでかいです。IMG_2906IMG_2903

さらに総出演者数は10万人で2007年にギネスブックにも登録されています。さすが国家の威信をかけた祭典の規模は違いますね〜。このバックスタンドだけで2万人の中学生が集められています。IMG_2914
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拡大するとこんな感じwIMG_2908

本番前の肩慣らしですら、すでに圧巻です。

実のところ、このアリラン祭も例のごとく「悪の化身のような大日本帝国」に対し抗日武装闘争を繰り広げ勝利する、という我々とすれば全くありがたくないシーンからスタートするのですが・・・IMG_2920 IMG_2926 IMG_2927 IMG_2928

この際そんな難しいことは無視して、単純にこの素晴らしい芸術を楽しむことにしました(笑)

いやぁしかし当初の期待値が高ければ高いほど、実際に見た時に自分の期待値が高すぎたことに気づいてがっかりすることが多いのが世の中の常なのだけれど、このアリラン祭は僕の期待値を完全に上回っていました。

しかしなんていうか、一致団結ってスゴイですね。IMG_1661 IMG_1664 IMG_1666 IMG_1668

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北朝鮮はカルトの聖地?

「観光をするにあたってお願いがあります。それは金日成主席や金正日総書記、そして金正恩第一書記への我々の忠誠心と気持ちを察していただきたい、ということです。」「決して呼び捨てなどされないようお願いします。肖像画や銅像を写真に撮られるときは、どこか一部分が見切れたりしないよう全て画面の中に収めてください。」「こちらで新聞や書籍などを買われるかもしれませんが、それに主席などのお写真が載っているときは、その写真が折れ曲がったりしないように気をつけてください。また必要が無くなったとしても決してゴミ箱などに捨てたりしないでください。その新聞を包み紙などに使用しないでください。」

ツアーガイドとの旅程の打ち合わせなどのブリーフィングにあたって、一番初めに念を押して言われたのが上記のようなことでした。もちろん僕たちのツアーガイドの二人共、そしてホテルで見かけたその他大勢のツアーガイドやスタッフをはじめとする現地の人々も、みんな左胸に金日成や金正日の肖像画のバッジを付けています。

僕たちが彼らの信仰の対象をどう思っているのであれ、彼らを悲しい気持ちにさせたくは無いですから、僕自身相当に気を使って”普段は何も考えず呼び捨てしている金日成たちの名前”に、彼らと同じように敬称を付けて呼ぶように努力しました。それでも一度は煩わしいのも手伝って「金正日さん」と言ってしまったのですが、やはり相手の顔色がすっと変わるのがわかりました。

と、まぁ要するにそれくらい外国人の僕たちですら気を使わなければならないのが、彼らの信仰の対象である金ファミリーという国家元首なのです。

平壌の街のいたるところには金日成や金正日の肖像画が飾られています。IMG_2860 IMG_2865

銅像のでかさは半端ではなく、軽々しくポーズを取って写真を撮るなんてことはもっての他、銅像に献花した後にしっかりと頭を下げたお辞儀を求められます。IMG_2982

そして市内にはそれぞれなんらかの意味(抗日勝利とか)と、そしてなんらかの記念日(例えば金日成の生誕〇〇周年とか)を紐付けた巨大モニュメントがあちこちに建っていて、どれもこれもスケールが壮大です。IMG_3002 IMG_3003 IMG_3047

極めつけはこれ、太陽宮殿。IMG_2953 IMG_2952

金日成、そして金正日の遺体がそのままの状態で保存されている、バカでかくて超豪華なこの宮殿は、徹底的に管理されていてカメラはおろかコイン一枚ですら持ち込ませてくれない。入り口から数百メートル続く廊下には、これみよがしに豪壮な音楽が鳴り響き、往復分設置された動く歩道上では数多くの軍人・一般人が身動ぎ一つせず粛々と立っている。そして両脇には金日成たちの生前の大活躍がわかる写真の数々。IMG_2954

厚さ20センチはあろうかというような分厚い大理石の扉をくぐり、靴底の泥を落とすための自動ブラシの上を歩き、エアーカーテンで身体の埃を吹き飛ばされて、ようやく遺体が安置されている大広間にたどり着く。ライトアップされている金正日の遺体が入ったガラスケースの周囲を回りながら前後左右4度に渡って深くお辞儀をした後、この部屋を後にすると、今度は彼が生前に使っていたメルセデス・ベンツ、電動カートはおろか、電車の車両や船まで宮殿のそれぞれの広間に持ち込まれて展示されている。

世界の聖地と呼ばれるような場所、例えばバチカンやチベットのポタラ宮、エルサレムの聖墳墓教会や嘆きの壁にも行ったけれど、そのどれよりも強く訴えかけてくるようなこの宮殿の圧迫感ともいえる雰囲気は本当に別格でした。

これはまさに「カルト宗教の聖地」そのものです。国家や国民による同調圧力と周囲の情報からの完全遮断、そしてこのような大量のモニュメントや銅像と肖像、さらに極めつけのこの宮殿の空間はいとも簡単に人の心を持ち去り、そして縛り付けてしまうのに充分すぎる力を持っています。素晴らしい宮殿でしたが、僕は一歩外に出て空気を吸った瞬間に心の底からホッとしました。IMG_2961

僕の感じたもう一つの北朝鮮を知るキーワード、それはこの国の実態が共産主義や社会主義などではなく、金日成とその家系を信仰する「宗教国家」であるということだと思います。僕の全く知らなかった未知の宗教の聖地ど真ん中に来た、そんな感覚の数日間でした。

さて、次回は今回の旅のメインだったアリラン祭について書きたいと思っていますので、またぜひ読んでやってください。

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