北朝鮮(ちなみに現地の人々は自国のことを「共和国」と呼んでいる)で出会った人々は、ガイドのお二人やドライバーの人をはじめ、レストランや土産物屋その他あちこちで触れ合った人たち全て、非常に気が利いてとても親切で、なんというか節度のある素敵な人々でした。平壌の街は素晴らしく清潔で美しく、あちこちに効果的に公園や森が配置されています。
多くの人々は非常に安く利用出来る(5円程度)バスや地下鉄、路面電車などの公共交通機関を利用し、とても質素ではあるけれど僕が今まで見てきたような途上国(貧困国)の人々とは全く一線を画す生活ぶりです。
そういった意味で北朝鮮は、街も人々も暮らし向きも多くの日本人が想像しているような国ではありません。どちらかというと想像以上に素晴らしく、下記のようなシステムを聞いている限りでは、ある意味理想を追求していると言っても過言ではありません。
学校教育は12年間の義務教育が全て無料
その教育期間中、全ての人々になんらかのスペシャリティー(アクロバットや楽器、語学や芸術など)を卒業するまでずっと徹底的に教えこむ
無税
病院などの治療は全て無料
住宅費も無料
実際に、このスペシャリティーを教えるという教育が素晴らしく機能しているのは、サーカスやショーを見たり、建築物や工芸品などの見学をしたりするとよくわかります。そして、多くの人びとの細かい気遣いや街の清潔さなども、ある一定以上の道徳教育がなされているからこと出来ることでしょう。
しかし、です。。。それとは反対に、彼らの歴史に関しての事実認識などは、僕たちの知っている「それ」とは全く違ったストーリーが展開されています。はっきり言ってトンデモ認定ド真ん中な歴史認識です。例えば平壌は5000年!の歴史を誇っていて、古くは中国大陸までをも支配していた、とかを真顔で切々と語ってきます。朝鮮戦争では1953年7月27日にアメリカ軍を降伏させた、と「がっくりとうなだれた米軍将校の写真」や「白旗を上げている米軍の車両」の写真とともに誇り高く説明してくれます。
なぬっ?平壌が5000年前??中国ですら4000年の歴史とか言ってたよな。エジプト文明って何年くらい前だったけ?3000年前?エルサレムの歴史も確かそんなくらいだったよな?・・・なんて思っても、調べる手立てがここにはありません。
朝鮮戦争において、世界で初めて「破廉恥なアメリカ帝国主義の高慢な鼻をへし折って」その強大性の神話を打ち破った、とか言われても、そんなわけ無いやんww あれっ?でもじゃぁなんで朝鮮戦争は終わったんだろう?あの白旗を上げた車に乗って米軍将校が38度線までやってきて、北朝鮮政府と停戦協定をしたのは一体どういう事実だったんだろう?・・・なんて疑問を持っても、ここにはインターネットも検閲を受けていない本も存在しません。
彼らに詳しく聞けば聞くほど、トンデモな内容の回答とおかしな証拠が出てきて、余計に深みにハマる一方なのです。例えばこんな写真とか。。。
これは朝鮮戦争で勇敢に闘う北朝鮮兵たちの写真ですが、構図からしても写真の陰影からしてもフォトショップ系加工でのでっち上げ丸わかりですw
そんなこんなで僕は色々な疑問がありすぎて、しかもそれを一切調べたり反証したりする手立てが無くて、頭のなかがグルグルになって眠れなくなりました。
僕は常に出来る限り両極端に反対の見解を調べて自分なりの正解を探し、バランスをとるように心がけています。ですから、今回北朝鮮に来たことによって、日々自分たちが知らされていること、刷り込まれていることと現実の大きな違いを目にしたり体験したりすることが出来たのは、非常に大きな収穫だったと思います。でも、あの国の中にいる間は、そのバランスを取る、ということが全く出来ないのです。これは本当に危ないです。超ヤヴァイです。たった3日間だったから良かったようなものの、これが1年続いたら調べることを諦めてしまって、人間が変わってしまう自信がたっぷり有ります。
それを北朝鮮の人達は生まれた時から今現在も、あの情報から遮断された空間の中で信じ続けて生きています。これこそが洗脳というものだ、と僕は思いました。と同時に僕は自分で色々なことを調べる手立てを長期間失ったり、もしくは調べることを諦めたりした瞬間から、人間はどこに住んでいたとしても周囲や国家や何かしらの利益に誘導され洗脳されていくのだろう、ということもよく分かりました。だからこそ、これからも色んなことを自分自身の目で見て、感じて、触れて、そして自分の頭で考えながら生きていきたいと、改めて胸に誓いました。