アーバナイゼーション

今後もどんどんと都市人口が増えていきますよ、という人口動態とインパクトについて非常にわかりやすい記事。

人口論で一番大事なこと、アーバナイゼーション

たしか数年前に世界の都市人口比率が51%になったというデータを見たことが有ったのだけれど、これから40年でそれは70%に増加する見込みのようだ。2050年に人口が100億人に達すると予測されているわけなので、都市人口が70億人(現在の世界人口とほぼ同じ)になるってことですよね。

現在はまだ都市人口と農村人口がほぼ1対1なので都市部に35億人、農村に35億人が住んでいる。単純な言い方をすると、一人の農家が一人の都会人の食を支えているのが、今後40年掛けて都市人口70億、農村30億人となるから、一人の農家で二人以上の都会人の食を支えることになっていく。

少し話は逸れるが、途上国に来てから農家という人々を観察していて、実は農業という職業に自ら選択して従事している人が非常に少ないという、ものすごく当たり前の真実に気がついた。たまたま農村に生まれて、それ以外に選択肢が無いから昔ながらのやり方で、もしくは近所の人たちの見よう見まねで適当に作物を植えて、自給自足に毛が生えたような暮らしをしている、というのが典型的な途上国農家の姿だ。彼らがやっているのは「農業」という事業ではなく、炊事洗濯と同列の「生きていくための家事」の一部でしかない。

炊事や洗濯などの家事をより簡単に楽ちんに済ませてしまいたいのと同じように、彼らも「作物を育てるという家事」をより簡単に楽ちんに済ませてしまいたいと考えている。だからいくら農業指導などのNGO団体などが現地に赴いてより良い農業のやり方を指導しても身につかない。農業指導に行くような方々はプロの農業人なわけなので、手間ひまかけてでもより良いものが作れるように指導する。でも、指導されている方は手間を掛けずに楽できる方法が知りたいだけなのだ。

例えるならば、一人暮らしの若者が生きていくために仕方なく適当な料理を自分でやっているのを捕まえて「料理人」と称してはいけないし、そこにプロの料理人を送り込んで懇切丁寧に指導したって、そもそも料理をやりたいわけじゃないから意味ないよっていう感じだと思ってもらえればいいだろう(笑)

そんなわけで、農村部に住む「農家とカテゴライズされている人々」の大半は農業をやりたいわけではないので、都会で金が稼げて少しでも楽な暮らしが出来るのであれば、当然のように都会暮らしを選択するようになる。反対に農村部に残っていく人々の中には、自ら農家として生きることを選んだ人の割合が必然的に多くなる。そうやってプロの農家として頑張っていこうと考える人々にとっては、これからの40年間で市場規模は放っておいても2倍になるということだ。もちろん農村で自給自足の食生活をしている人と都会で消費型の食生活をしている人の食糧消費インパクトは全く次元が異なるから、現実的な市場規模の拡大は2倍では効かないだろう。

というわけで、僕は最近この「選択的にプロフェッショナル農家になりたい人々」とビジネスするのが、正しい道筋だなぁと思いつつAGRIBUDDYの開発を行っているのですが、はてさて…

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日本と途上国の農業、それぞれの問題点

今日から8月いっぱいの一ヶ月間はベトナムのハノイで過ごすことにしました。いよいよ佳境に迫ってきたAGRIBUDDYの機能実装完了に向けて、開発速度を加速させるためのチーム作りが主な目的です。とは言え、実際のところは僕が来たところでコードの一つ書けるわけでもないので、あまりエンジニアのみんなにあれやこれや話しかけすぎて思考中断に追い込まないように気をつけようと思っていますw

さて、そんな僕たちAGRIBUDDYの対象ユーザーが暮らすアジア途上国の農業実態を色々なデータを見ながら紐どいていると、非常に興味深いことが見えてきますよ、というのが本日のお話。

まず最初に、ここ数年にわかに活気づいているアメリカの農業系スタートアップ界隈ですが、彼らがターゲットとしている北米の農家(というか農業従事者)はおよそ100万人。世界の耕作面積のおよそ10%に当たる、1億6千8百万ヘクタールという途方もない規模の農地をたった100万人で運営している訳ですね。これを一人あたりに換算すると153ヘクタール(ディスニーランド3個分)の農地が一人の農家によって運営されていて、1ヘクタール(1万平米)あたり1,600ドルくらいの売上になっています。

我らがカンボジアはというと、農業従事者数がアメリカの約4倍程度の380万人。それに引き換え耕作面積は420万ヘクタール程度なのでアメリカのなんと40分の1。同じく1ヘクタールから1年間に生産される作物の価値はおよそ1,200ドル。一人の農家が運営しているのが1.1ヘクタールくらいだから、単純に考えると年商(年収ではない)が1,320ドルくらいになってくるので、やっぱりカンボジアの農家が貧乏なことには間違いがなさそうですね。

カンボジアもアメリカも1ヘクタールあたりの生産価値があまり高くないのは、双方共に低付加価値作物(トウモロコシとか小麦とか米などのコモディティー作物)を育てているからだろうけれど、アメリカはそれを少人数超大規模で大量に生産することによって農家の利益を確保することに成功している。カンボジア(というか途上国はどこでも同じ)では、アメリカと同じような低付加価値作物栽培を人海戦術でやっているのだから、そりゃあこれではいつまで経っても農家が豊かになんてなるはずが無い。

別の意味で農業の問題が色々と取り沙汰される日本はというと、なんと1ヘクタールあたり1万1千ドルを生産しており、これだけ見るとかなりの優等生っぷりを発揮している。しかし別の角度から眺めてみると、薄々わかってはいたけれどやっぱりそうかという問題点が浮かび上がってくる。

農場従事者数 一人あたりの生産価値 ヘクタールあたり生産価値 一人あたり耕作面積
日本 1,898,920 $29,170.27 $11,725.81 2.49ヘクタール
イスラエル 60,544 $120,428.12 $20,059.70 6.00ヘクタール

上記は農業先進国として名高いイスラエルと日本の農業との比較だ。まず農家一人あたりの生産価値を見て欲しい。日本の約3万ドルに比べてイスラエルは12万ドルと4倍もの開きがある。さらに1ヘクタールあたりから生み出される価値も1万ドルと2万ドルでおよそ倍もの差がある。さらにさらに一人あたりで運営している農地面積も2.5倍近い違いがある。これをわかりやすく言葉にすると、こういうことになる。

『日本の農業は、徹底した効率化を追求すること無く、人件費の高い日本人が小さな耕作地を運営しているせいで、平均的な日本人の所得に及ばないような生産価値しか生まないような事業になってしまっている。』

すなわち、日本の耕作面積からすれば農家の数が多すぎるというのが、1つ目の問題点。3分の1まで減らすくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。次に面積単位の生産価値が低いこと。砂漠のど真ん中の、国家予算の60%を国防費用につぎ込んでいるような国ですら、ここまで効率よく農業を行って利益を出すことが出来ているのだから、日本の農家がその半分の価値しか生み出せていないのは、やはり「あまりやる気の無い農家が必要以上にたくさん居座っている」という結論を導き出す他ないんでしょうねぇ。。。

やる気の無い農家が、本気で農業をやろうと考えている人々に農地を託して別の仕事に付いてくれれば、一気に問題が解決へと向かいそうなのだけれど、中々そうもいかない大人の事情ってものがあるのだろう。と、まぁこうやって日本の農業に関して問題点を分析してみても、やはり僕たちが何か出来そうなことはあまり無さそうだ。その点、途上国農業に関して言えば、まずそもそもの人件費が低いので、少しでも付加価値の高い作物を栽培できるようにすれば、少なくとも今の数倍は楽な暮らし(その代わり今よりちゃんと働く必要も出てくるけれど)になるはずだ。AGRIBUDDYのフォーカスはそこに有る。

そんなわけで、話が長くなってしまいましたが、ハノイの皆さん本日よりお世話に成りますので、ぜひよろしくお願いします。

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AGRIBUDDY正式版リリース

昨年11月17日にβ版としてリリースをした、途上国農家向けインターネットサービスAGRIBUDDY。まずは自社の農場で作業工程進捗管理用に使っていたGPSによる農場面積の測定など、機能を限定した状態で実際にカンボジアの農家(カンボジアで農業に挑戦している日本の仲間たち含む)に現場で使ってもらいながら、改良点や今後の方向性を探ってきた。
『AGRIBUDDY ベータ版リリース完了!』http://hugs-int.com/kengo/archives/2210

スマホなんて触ったことのない、インターネットがなんなのかさっぱりわかっていないような農家のおっちゃんたちに、どうすれば便利に使ってもらえるようになるのか。彼ら途上国農家の人々の情報量とデータの少なさ、それに伴うあまりにも非合理的な意思決定や非効率的な行動を、どうすれば少しでも改善できるようになるのか。そこにのみフォーカスをしながら、必要と思われる機能を考え続けてきた。

そんな中で僕たちが出した最初の結論は、途上国農家をネットワーク化させることでした。下手をすれば生まれた村の周囲50キロから一生外に出ないような、閉鎖された情報空間で生きている農家の人々を相互ネットワーク化することによって、正しい技術や情報の共有が出来るようにする。自分の作業や成果を人に見てもらったり、認めてもらったり出来るようにする、ということが途上国の農業を改善する最も大きな一歩になるということに気付いたのです。

先日の投稿『貧しいカンボジア人の欲しいもの』でも触れたように、カンボジアのような”典型的な発展途上国”の、これまた貧困層の代表例でもありそうな地方農村に暮らす人々ですら、日々スマホを所有する人口が増えている。これらスマホを含む最先端テクノロジーの価格は日々下がり続け、インターネットのカバレッジエリアはどんなジャングルの奥地に行ってもカバーされそうな勢いで広がっている。このような潮流があるからこそ、今までテクノロジーやITから取り残されてきた農家の人々が、スマホを使ってネットワークを作り最新情報を共有するという姿が想像可能となってきた。

近い将来、必ず訪れるであろうそのような未来図が待っているのであれば、それを僕たち自身の手で成し遂げたい。「いや〜、そんな簡単にはいかんだろう」と誰もが口を揃えて言うだろうからこそ、僕たちが挑戦する価値がある。

というわけで、本日4月1日にようやくAGRIBUDDY正式版をリリースすることとなりました!
https://agribuddy.com
https://play.google.com/store/apps/details?id=hugs.agribuddy

また、このプロジェクトを成功させるべく香港に設立したAGRIBUDDY LIMITEDが、ワールドワイドなベンチャー投資市場に非常に強いコネクションを持つScentan Venturesより第三者割当によるシリーズAAラウンドの資金調達を行いました。このことにより、今までよりさらに開発とフィードバックのスピードアップを図り、僕たちの農場がある”世界最後発”農村地方パイリンから、途上国随一にして最大の農家ネットワーク構築に挑戦します。

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