嘘か真か?夢のスーパー作物

僕たちの農場では現在キャッサバという芋を育てているのだけれど、以前からスイートソルガムという作物にも注目している。このスイートソルガムという作物は、種子に豊富なタンパク質を含んでいる、且つ茎の部分は高い糖度を持っているため絞り汁を発酵させてアルコール(バイオフューエル)を生成することが出来る上に収量が高いという、これからの世界の食糧とエネルギー事情を担っていく存在になりそうな作物だ。

最近僕の知人のカンボジア人農場主がこのスイートソルガムの大規模栽培に向けてテストを開始するということで、話を聞きに行ってきた。するとその人は「日本の企業がインドネシアで大成功させているスーパーソルガムという種類のものを栽培する。茎の部分をペレットにしてバイオマス発電の原料にするために、三井物産が買い上げてくれることになっている」と言っている。なんと、すでに日本企業がインドネシアでそこまでやっていて、三井物産がカンボジアからペレットを買い上げるというようなところまで進んでいたのか!とビックリしたので、ちょっと色々とこのスーパーソルガムについて勉強してみることにした。

スーパーソルガムをやっているのはSOL ASIA HOLDINGS PTE.というシンガポール法人だが、その親会社は株式会社SOL HoldingsというJASDAQ(6636)上場企業だ。数年前まではシスウェーブホールディングスという半導体関連の企業だったそうだが、どうやら経営陣がごっそりと入れ替わってからソルガム事業に着手し、あれよあれよという間にインドネシアで政府が注目するレベルの大成功を納め、今やメキシコなどにも進出する傍らカンボジアにも触手を伸ばしてくるという、破竹の勢いの会社のようだ。

現在の株価が242円で時価総額43億円。えらく成功している割には株価(というか業績)に反映されていないなと思い、過去のIRを色々と調べてみたら去年の7月3日発行の興味深いIRを見つけた。
http://www.sol-hd.jp/pdf/20140703.pdf

要は「ストック・オプションを発行したよ」というお知らせなのだが、これが発行済株式17,933,612株に対して11.16%にも該当する2,002,000株。しかもストック・オプション行使条件が、”平成28年5月31日の間で、一度でも(一瞬だけでも)株価が800円を超えた場合”、及び、”平成27年3月期もしくは平成28年3月期の売上高が24億円を超過した場合”となっていて、なんとも香ばしい素晴らしいゲーム感覚の報酬体系を採用している会社のようだ。

はて、現在の株価が242円となっており、ストック・オプション行使条件(要するにタダで株を大量に貰える条件)には程遠い感じだけれど、実際のところどうなんだろうと思って過去の株価チャートを見てみると・・・

スクリーンショット 2015-06-27 1.00.11 PM
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6636&ba=9&type=6month

超えてるよwww しっかりと、しかもご丁寧にたったの一日だけ800円を超えているwww その後は見事な株価暴落で200円台に突入して以来上昇の気配すら伺えないw

いずれにせよこれで1つ目の条件はクリアしたから、後は来年3月の決算で売上が24億円に達すれば、現経営陣のみなさんは大量の株式を入手する権利を得るわけか。もちろん入手した後も市場での株価が372円を上回らないと、なんの旨味もないわけだけれど、これって株のドシロウトの僕が見てもちょっと色々な妄想が頭のなかを駆け巡るくらい怪しく見えてしまうのに、証券取引等監視委員会とかに調査されたりしないのだろうか?

っていうか、地道な改良が必要で中々思うようにいかない農業の世界と、マネーゲームに見えかねない株の動きをしている「元半導体関連企業」というのが、どうにもしっくりと結びつかないんだけれど、大丈夫なんだろうか?そもそも三井物産が、カンボジアでスーパーソルガムから作られたペレットを買い上げるっていう話も本当なんだろうか?

うーん、もちろんこのSOL HOLDINGSという会社が行っているスーパーソルガム事業がホンモノであり、無垢にこの話を信じてテスト栽培に挑もうとしているカンボジア人が成功を納めてくれるのが一番なのだけれど、どうも色んなことが引っかかってしまうのよね。もちろん僕の調査結果と感想は本人にも伝えたけれど、一度信じちゃった人の気持を変えるのって言うのは難しいし、そもそもこの会社が怪しいと思うのも全て僕の推測の域を出ないわけだし。

日本企業のせいで嫌な思いをするカンボジア人が増えないことを祈ります。

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AGRIBUDDY正式版リリース

昨年11月17日にβ版としてリリースをした、途上国農家向けインターネットサービスAGRIBUDDY。まずは自社の農場で作業工程進捗管理用に使っていたGPSによる農場面積の測定など、機能を限定した状態で実際にカンボジアの農家(カンボジアで農業に挑戦している日本の仲間たち含む)に現場で使ってもらいながら、改良点や今後の方向性を探ってきた。
『AGRIBUDDY ベータ版リリース完了!』http://hugs-int.com/kengo/archives/2210

スマホなんて触ったことのない、インターネットがなんなのかさっぱりわかっていないような農家のおっちゃんたちに、どうすれば便利に使ってもらえるようになるのか。彼ら途上国農家の人々の情報量とデータの少なさ、それに伴うあまりにも非合理的な意思決定や非効率的な行動を、どうすれば少しでも改善できるようになるのか。そこにのみフォーカスをしながら、必要と思われる機能を考え続けてきた。

そんな中で僕たちが出した最初の結論は、途上国農家をネットワーク化させることでした。下手をすれば生まれた村の周囲50キロから一生外に出ないような、閉鎖された情報空間で生きている農家の人々を相互ネットワーク化することによって、正しい技術や情報の共有が出来るようにする。自分の作業や成果を人に見てもらったり、認めてもらったり出来るようにする、ということが途上国の農業を改善する最も大きな一歩になるということに気付いたのです。

先日の投稿『貧しいカンボジア人の欲しいもの』でも触れたように、カンボジアのような”典型的な発展途上国”の、これまた貧困層の代表例でもありそうな地方農村に暮らす人々ですら、日々スマホを所有する人口が増えている。これらスマホを含む最先端テクノロジーの価格は日々下がり続け、インターネットのカバレッジエリアはどんなジャングルの奥地に行ってもカバーされそうな勢いで広がっている。このような潮流があるからこそ、今までテクノロジーやITから取り残されてきた農家の人々が、スマホを使ってネットワークを作り最新情報を共有するという姿が想像可能となってきた。

近い将来、必ず訪れるであろうそのような未来図が待っているのであれば、それを僕たち自身の手で成し遂げたい。「いや〜、そんな簡単にはいかんだろう」と誰もが口を揃えて言うだろうからこそ、僕たちが挑戦する価値がある。

というわけで、本日4月1日にようやくAGRIBUDDY正式版をリリースすることとなりました!
https://agribuddy.com
https://play.google.com/store/apps/details?id=hugs.agribuddy

また、このプロジェクトを成功させるべく香港に設立したAGRIBUDDY LIMITEDが、ワールドワイドなベンチャー投資市場に非常に強いコネクションを持つScentan Venturesより第三者割当によるシリーズAAラウンドの資金調達を行いました。このことにより、今までよりさらに開発とフィードバックのスピードアップを図り、僕たちの農場がある”世界最後発”農村地方パイリンから、途上国随一にして最大の農家ネットワーク構築に挑戦します。

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2015年スタートアップにオススメ事業領域

1979年創刊のアメリカビジネスパーソン向け月刊誌『Inc』が、起業家やベンチャーキャピタル、各業種のエキスパートたちにインタヴューした結果をまとめた、2015年度の注目事業セクターベスト8を発表した。
http://www.inc.com/graham-winfrey/best-industries-2015-the-best-industries-for-starting-a-business-in-2015.html

注目事業領域は以下のとおり
Fantasy Sports Services(オンラインスポーツゲーム)
Gamification Services(ゲーミフィケーション)
Relaxation Beverages(エナジードリンクの対局にあるドリンク類)
Yoga and Pilates(ヨガやピラティス)
Legal Marijuana(合法マリファナ)
Food E-commerce(食品eコマース)
Public-Sector Technology(公共セクターのテクノロジー化)
Agricultural Software(農業系ソフトウェア)

言うまでもなく、HUGSが手がけるAGRIBUDDYはAgricultural Software(農業系ソフトウェア)の中でも、さらに一歩先端を行く『途上国のインターネット未開拓の地』に暮らす人々をユーザーとして取り込む戦略のもと、日々開発と拡散作業に勤しんでいる。ユーザーに少しでも楽しみながらサービスを利用してもらうために、ゲーミフィケーションも重要なファクターになると考えているので、この8つの領域のうち2つをカバーする感じですね。

僕と共同代表の黒川がカンボジアに移住した時は、まだカンボジア自体が今のような形で注目される直前で、僕が「カンボジアでビジネスをやる」と言っても周囲の誰もがピンと来てくれなくて、カンボジアはボランティアをする場所であって金儲けをする場所ではない、というのがほとんどの日本人のイメージだった。それがここ最近、様々なテレビ番組でカンボジアが取り上げられ始めたり、ビジネスパーソンが大量に押しかけてくるようになったりで、やっぱりあの時『カンボジアに火がつく匂いがする』と感じた感覚は間違っていなかったと改めて思い直している。

その中でも僕はほとんどのビジネスパーソンが手を出さない農業セクターへの可能性を強く感じ、大規模農業というポジショニングでカンボジアでの挑戦を開始したが、僕は当初から農業とIT、そして金融という組み合わせが今後大きなビジネスになると考えていた。なぜそう考えたかということについては、実は別に種も仕掛けもない話で、あらゆる事業領域においてITソリューションと金融サービスが必要ない業態が存在しないのに、農業には全くその影も形も見当たらなかったからだ。

残念ながら後発開発途上国カンボジアでの大規模農業は茨の道で、中々簡単には結果をもたらせてくれないが、お陰でどの部分に最もITソリューションが必要なのか、金融サービスをどのように取り入れていくべきなのかということについては、実体験を通して非常に多くの学びとアイデアを得ることが出来ている。そのエッセンスを100%注ぎ込んでいるのがAGRIBUDDYというサービスなのだが、最近この農業系ITサービスに関してもにわかに注目度が上がりはじめ、いよいよ追い風が吹き始めたと思っている。

今回のIncの記事もそうだが、昨年末にはGoogle会長のエリック・シュミット氏がFarm2050という農業系スタートアップ支援団体を立ちあげたということも大きなニュースとなっていた。
http://jp.techcrunch.com/2014/11/21/20141120farm-2050/

これは今後2050年の地球人口100億人に対して現在よりも70%も食糧を増産する必要に迫られているのに、“起業家が挑戦すべき問題はたくさんあるが、その中の10%ぐらいに90%の起業家の関心が集中している。農業は、その10%に入っていない。本当に重要な課題に起業家たちの関心が分散すれば、テクノロジ企業の数は今の100倍〜1000倍ぐらいにはなるはずだ。”という考えのもと、農業にテクノロジーを組み込んだビジネスを立ち上げる起業家をあらゆる方法で支援しようという取り組みだ。

Incの記事中にもあるとおり、農業巨大企業モンサントが農業系スタートアップを1000億円で買収したりと、巨額イグジットが可能であるということが明確になったことも様々なベンチャーキャピタルや投資家の目を引きつけ始めた一要因かもしれない。いずれにせよ投資家の注目が集まれば起業家たちの資金調達が俄然やりやすくなるために、さらに多くのスタートアップが立ち上げられることになるだろう。

カンボジアと農業系ITスタートアップ。当初はまだまだ無風に近かった僕たちのポジションに追い風が吹き始めたことは間違いない。この風をしっかりと掴んで、社会に素晴らしいインパクト与えるという結果を残せるように、ここからさらに勝負します。

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