HUGS Agricoでは運営している農場とは別に4ヘクタールの試験農場を所有しています。ここでは、現在灌水コントロールシステムの実験を開始しました。カンボジアの様に雨季と乾季がハッキリと分かれている国では、乾季の間に作物が成長できる水分を確保することが、高収穫量・高収益をもたらせるのでは無いかという仮説の下での実験です。
まずは裏に流れている小川を掘って、乾季の少ない水量でも貯水出来るようにします。
例えば現在主力で栽培を行なっているキャッサバは乾燥した条件下でも非常に強い作物ですが、やはり最低限の水があることが萌芽の条件ですし大きく成長もします。ですので通常、作付を行うのはちょうど今の様な雨季が始まる時期、もしくは雨季が終わったばかりでまだ土中に水分が残っている時期になります。これを潅水システムを組み込むことによって、乾季の真ん中に作付して萌芽させることが出来れば収穫時期をコントロールすることにも繋がり、さらに収量もアップして収益が大幅に増える可能性を秘めています。
また世界中で飼料原料として広く使われているトウモロコシも、4ヶ月で収穫できるのにもかかわらずカンボジアでは年間2回しか栽培を行いません。しかもそのうち一回は雨季の到来が一週間でも遅いと全滅します。これもキャッサバと同じく乾季には発芽しないからなのですが、これに潅水システムを導入することによって年3回の栽培を可能にしたいと考えています。
もう一つの問題はコストがどれくらい掛かって、どれくらいの収益増に繋がるかという、いわゆる費用対効果の試験も兼ねています。カンボジアの様な国ではどのような文献を調べても有用なデータがそもそも存在せず、近隣農民の言う数字やデータは全くデタラメですw ならば自分たちでデータを取るしか方法が無いわけですが、反対に誰も持っていない生きたデータという大きな財産を手にすることにもなるわけです。
この潅水システムに関して世界で一番先端を走っているのがイスラエルです。彼らは砂漠の真ん中という悪条件に国が位置しているにもかかわらず、周囲全域が敵国に囲まれているので、食料自給率を上げることはまさに生死を分けることにも繋がる命題です。この無理難題を点滴潅水システムという、水を徹底的に効率的に使う方法を編み出すことによって克服し、食料自給率を94%まで引き上げさらには農業輸出国にまでなりました。
カンボジアはイスラエルに比べればはるかに農業特性には恵まれているはずです。極端に言えば「何もしない農法」ですらある程度の収量を確保出来てしまいす。だから今まで多くの人が何も工夫をして来ず、ポテンシャル任せの原始的な農業を行なっているのが現状です。僕たちは、このカンボジアの優れたポテンシャルに最先端テクノロジーを導入したいなと、そんなふうに考えています。