アメリカの大統領がトランプになって「なんであんな野蛮なおっさんが大統領に選ばれたんだ、有り得ない」というような事を言って、現地でデモとかやっている人が多数居たり、日本でも色々な見解が出ているようだ。ぶっちゃけ僕もオバマ大統領はすごくいい人で、次もヒラリーが大統領になったほうがトランプよりはよっぽど世界のためにもマシだったんじゃないかと思ってるので、実際のところどうなのよ的な話をアメリカ人に聞いてみた。
リベラルな人が多いシリコンバレーの中で唯一と言っていいくらい堂々とトランプを支持していたピーターティールも言っていたけれど、今のアメリカはごく一部の裕福な人々以外は相当に貧しい状態になっているらしい。特に地方に住む白人のブルーカラー(工場勤務の人々)。。。
僕たちの世代の一つ上の人たち、ようするに僕たちの親父世代の人達は工場勤務をしているだけで家族が暮らしていくことが出来た。郊外に家を買って車を買って子どもを学校にやって、という暮らしが親父の収入だけでまかなえてた。やがて、その子どもたちは大人になって地元から出ずに親父と同じ工場に勤務したり、ようは当時と変わらぬ仕事をしているのだけれど収入の増加に比べて生活コストが圧倒的に高くなってしまった。結婚したって共働きで、車や家を買うなんて夢のまた夢。虫歯になったって歯医者にも行けない。
先日もうちのBrandonがアメリカに帰国したときに調子が悪くなって、病院に一晩入院したら4,000ドル(45万円)請求されたらしい。万が一の病気のために保険に入ろうとしたって年間で数百万円、その保険だって歯医者などには適用されない。保険が効かない歯医者に行けば1回1,000ドル(10万円)は取られるっていうんだから、普通の収入ではとてもじゃないけど安心した暮らしが出来るとは言い難い。そんな風に親父の世代と同じように働いているにも関わらず暮らし向きは悪くなる一方の中、自分たちが見下していた黒人や南米系、アジア系の連中がどんどん豊かになっていく。
自分達はアメリカのため世界のために悪い奴らがいるイラクやシリアに行って戦争して、何人も知った顔が死んだりしてるって言うのに、そのお陰で戦うこと無く平和を享受している中国やアジアの連中がアメリカに大量にものを売りつけてきて大金持ちになっている。何かが間違っている、今のままじゃダメだ。というタイミングで「We can change」を叫ぶ大統領候補が出てきた。確かにオバマは黒人かもしれないけれど、今までのアメリカでは有り得なかった選択肢を選んでみたらアメリカは本当に変わるかもしれない。
そうやって初の黒人大統領が誕生し変化を待ち望んでみたものの、気がつけばさらに黒人やインド人の上司が増えてきたばかりか、今やGoogleもMicrosoftも、AdobeもPEPSIもインド人がトップになってる。ある日突然会社ごと中国やインド企業に買収されたなんてのも星の数ほどあるんだろう。
「もうたくさんだ。黒人なんて信じた自分が間違っていた。前よりひどくなった。そんなタイミングで今度は女が大統領だと?ふざけんな。」
「差別はダメだ?世界はもっとグローバルにつながっていく?大きなお世話だ、もうアメリカに来んな。お前らが勝手に人の国に来て、差別すんなとか何様のつもりだよ。お前らが居なかったアノ時代、親父たちの時代のアメリカは良かったんだ。」
「どんな頭脳明晰な人々が正しいことを言ったって、それで自分たちの暮らしが楽にならなければ全く意味がない。トランプが言ってるみたいに、あの中国人が大量に生産する安物に関税を掛けて締め出せば、また自分たちの工場で作っているものがアメリカにあふれるようになるかもしれない。」
こんな風に感じているのが、僕たちが普段目にすることのない大多数の「一般的な」アメリカの白人たちだそうだ。そして自分たちが命を掛けて築き上げた世界の平和という土台の上で、やりたい放題に商売をやっているように見える中国人に憎悪が向いているんだそうだ。
だから、もしかするとこのタイミングでその鬱憤を全て背負って出てきたトランプ大統領の人気は案外根強いかもしれないですよね。イギリスのEU離脱問題もアメリカのトランプ大統領誕生も、根本的な問題は国民の大多数がどんどんと貧しくなっていっている、もっと言うと第三世界だったはずの国々の連中に抜かれ始めているというという事実に起因しているのであれば、それは日本も間違いなく同じ問題を抱えている国であり、多分この先も決して「追いつき抜き去られていく」という状況が変わることはないだろう。これからは、国家にぶら下がって大多数の貧しい人の1人になっていくのか、それとも個人で独自のネットワークというバーチャルな国家を築いていくのか、どちらかの選択肢しか無いんだと僕は思っています。
後者の選択肢を選ぼうと考える懸命な方々には、ぜひ加藤さんの著書『若者よ、アジアのウミガメとなれ』を一読することをオススメします。