全くもって現代文明社会の最先端を走る都市のひとつ東京の中で、これまたどっぷりとぬるま湯につかって生活している僕にとってきつい夜を過ごした次の日の朝、ミーティングが終わるや否や5時半には作業が開始された。
基本的に地雷撤去をする現場は事前に少人数のスタッフが来て、自分たちの担当範囲の周囲に立ち入ることが出来るように安全な道を作ってある。
だいたい500m四方くらいの土地に沿って地雷探知をして、幅約2mの道を作っていく。
今回の作業はその道の両端に杭を打ち込んでいってロープを張り渡し、安全な道と地雷原をしっかりと分けるところからスタートした。
まずは以前にここで作業をしたスタッフが書いた地図に沿って道を確認し、その道の両端の草を刈り取っていく。
そこに僕たちが道の両端に5m間隔で杭を打ち込んでいく。道幅はさっきも書いたとおり2m間隔なんだけれど、全て歩幅で測るいわゆる目分量での作業だ(笑)
右サイドに打ちつけた杭から大きく2歩踏み出した左サイドの同じところに杭を打つんだけれど、僕の方がみんなより歩幅が大きかったら撤去しきれていない地雷を踏むんじゃないのか?とか考え出すとどうしても歩幅が小さくなってきて、自分がやり終わった後で道を見るとだんだんと道幅が狭くなってきていた(笑)
炎天下の中防護服を着て、これまた防護ヘルメットをつけての作業だから結構きつい。
そしてその作業が終わったら、その杭に沿ってロープを張り巡らせて立ち入り禁止の看板を立てていく。
その向こうのどこかに地雷が埋まっていると思うとやっぱり少し独特の雰囲気を感じずにはいられなかった・・・
しかもこんな山奥でももちろん生活している人々もいるわけで、ちょっと現場をはずれたところでは本当にのどかとしか表現できないような田園風景が広がっている。
でもきっとこの人たちの中でも地雷で手足を吹っ飛ばされた人は何人もいるんだろうし、田んぼや畑を耕すのが危険と隣り合わせなんて、やっぱりちょっと普通ではない。
とそんな時、そののどかな田園風景の中から人が僕たちを呼びに来た・・・
「不発弾が落ちている」とアキ・ラが説明してくれた。
「一緒に行こう」と言われ、慌ててカメラを手に彼らの後について行った。
だいたい彼らはこのような田んぼのあぜ道や山中の道を歩きなれているから、とっても歩くのが早い・・・
僕は慣れない服にヘルメット、しかも今から爆弾が転がっているところに行くんだから、自分が歩いているところだって安全という保証があるんだろうかとか思いながらなので、どうしても歩くのが遅くなりがちだ(笑)
到着した先の茂みの中にどうやら落ちていたのを、このあたりを耕していた農民が見つけたようだ。
「これはポルポトの軍の手榴弾です。この中に破片がたくさん詰まっていて、爆発すると人をズタズタに傷つけます」
僕に役目を果たすことなく捨てられた手榴弾を示してから、おもむろにアキ・ラがそれを取り出した。
「多分持っていた兵士が殺されたからここに落ちていたんでしょう」
というアキ・ラの推測だった。
なぜなら、もし使用しようとして爆発しなかったものなら裏側のキャップが捻ってあるはずだからだそうだ。
こんなのが落ちていることに農民が気づかずにクワを当ててしまったら、それこそ一巻の終わりだっただろう・・・
その前に見つかって本当に良かったと思う。
その手榴弾を持ってテントのある場所まで戻っていくと、すでに連絡を受けた別のスタッフが爆発物を保管する場所を作っている最中だった。
穴を掘って土嚢を作り、それで処理前の地雷や爆弾、さらにそれらを爆破処理するためのTNT火薬などを保管する。
どうやら発見した地雷などは全て爆破処理にて完全に解体してしまうようだ。
この土嚢の土を掘り出した穴をもう少し掘ると、水が出てくるのでその水を飲料水などに使うそうだ・・・
ということは、要するにご飯を炊いたりスープを作ったりという水もここから汲み取った水を使用するということだ。
うーん・・・聞きたくなかったかもしれない・・・
午前中の作業が終わり昼飯の時間になると、みんな気持ち良さそうに飯を食べてバケツの水で顔や頭を洗ったりしている。
僕もこっちに来て顔を洗えとか言われたので行くと、バケツの水は明らかに茶色い色がしている。
僕の中での常識では水は無色透明なものだ・・・そう、少なくとも飲んだり洗ったりする水はそうと決まっている♪
でもこの水は明らかに、バケツの底すら全く見えなくくらい色が付いている(笑)
今までもカトマンズのホテルでは茶色いお湯のシャワーを、鉄臭いなぁと思いながらも浴びていたこともあるし、これしか身体を洗う手段が無いなら仕方ないと思って軽く顔を洗っていたら、気を利かせてくれた優しいスタッフが僕の背中や頭からたっぷり水を掛けてゴシゴシしてくれた♪
おかげでパンツの中にまで水がおしりの割れ目を伝って入ってきて、当分気持ちの悪い思いをすることになった(笑)
そして昼ごはんが終わるといよいよ手榴弾の爆破処理を行うことになった。
TNT火薬に着火用のガンパウダーを詰め込んだペットボトルを巻きつけ、この爆発の威力で手榴弾を爆破してまさに文字通りこの世から消し去ってしまう。
起爆装置からケーブルを延ばしてきて
このTNT火薬につないで
安全な位置からスイッチを押すと見事爆発するという仕組みだ。
ちなみに安全な位置から爆破ポイントまで約100mほど離れているんだけれど、最終的に起爆装置と火薬の線を結合する直前で僕たちはアキ・ラともう一人の作業員を残し全員安全地域まで下がるように命じられた。
というわけで、ちょうどきりがいいところだし眠いので今日はここまでにします(笑)
また明日・・・