シリコンバレーで意外だったことをいくつか。
まずインターネット接続がショボい。あの、何をダウンロードしても全くストレスを感じない日本の超高速接続に比べて、どうも”もっさりした感”が否めないのは気のせいだったのか?あんまカンボジアと変わらんやん的な感想をもちました。
次にまぁ、これは意外と言うよりは想像以上だったのがエンジニアの給料とその生活ぶり。新卒の「僕、コーディングをやってみたことは有ります」程度の人材で年収12万ドル(約1,450万円)、ちょっとマシな人材で14万ドル(約1,700万円)。このレベルの収入の人たちは遠方から電車に乗って通ってくる層の人々で貯金するなんて全く無理、税金や保険を払って生活するのでいっぱいいっぱい。虫歯にでもなって歯医者に行った日には借金生活が待っている。
17万ドル(約2,000万円)を超えてくると、ようやく車通勤が出来る身分になってくるらしい。ちなみに「生活費を切り詰めて起業するぜ!」的な野心満々のスタートアップCEOは年収8万ドル(約1,000万円)くらい。これはもう狭い部屋を友達とルームシェアしたりするレベルの生活になるらしい。サンフランシスコの地価はニューヨークのマンハッタンよりも高くなっているらしく、小さなワンベッドルームの部屋でも家賃が3,000ドル(約36万円)だとか。
ちなみにAGRIBUDDYの開発拠点のあるハノイだと、かなりハイレベルのエンジニアでも年収15,000ドル(約180万円)くらいで雇えるので、ざっとシリコンバレーの10分の1の価格ということになりますね。で、ハノイでの年収15,000ドルとシリコンバレーでの年収15万ドルのどちらが相対的に豊かな暮らしが出来るのかと言うと、圧倒的にハノイに軍配が上がりそうな気がします。あー、もちろん街全体の雰囲気とかクオリティーを言い出すと勝負にならないのだけれど、個人的に「俺って、もしかして貧乏なんじゃないだろうか?」と疑問に感じてしまいそうなのは、シリコンバレーの年収15万ドルの方っぽいですよね。
もう一つは、みなさん口を揃えて言っていたことで「シリコンバレーとという場所は日本以上の強烈なコネ社会で、まず外部の人がいきなりVCやエンジェルなどの投資家を訪ねて行く(というか、ネット経由で資料を送ったり、アポの申し込みも含む)という、若者が好きそうな行動をとっても全く相手にされない」ということだった。これもちょっと考えてみたら当たり前の話で、それこそ世界中から「自分の事業こそが最高だ」と思っている連中が山ほどの資料を送りつけてアポを申し込んでくるわけで、こんなものをいちいち資料に目を通しているだけで限り有る人生の時間が終わってしまいかねないわけで、自ずと信頼の於ける筋からの紹介を受けた人とだけ会ってみて、話を聞いてみるということになる。
ともすれば年収100万ドル(約1億2千万円)優に超えているような人たちに1時間とか時間を取ってもらうわけだから、ここにアポを入れてくれる紹介者の方々も変なのを紹介すると自分の信頼性が揺らいでしまいかねない。なのにも関わらず、僕は今回色んな方々の紹介のおかげで多くの人に話をさせて頂く機会に恵まれました。これが先日の記事にも書いたような『お返しのしようがない親切』の一つです。
実際のところ、僕たちが勝手にイメージしていたものとは違いシリコンバレーに「アジア志向」や「グローバル志向」のようなものは無く、お会いさせていただいた殆どの方は「カンボジアで農業系サービスをやってるとか言われても・・・」と困惑しながらも時間を取っていただいた状態だったと思います。
まずアメリカ市場で大成功する。
とうことが大前提となっているのがシリコンバレーであって、グローバルマーケットを網羅しているわけでは無い、というのも一つの現実でした。結果的にグローバルマーケットを狙いに行くのは当然だろう。しかしまずはアメリカのデラウェア州に法人登記して、シリコンバレー周辺で暮らし、アメリカマーケットでブレイクするサービスを作る。そして、この強烈なコネ社会で認知されるために膨大なコスト(時間もお金も)を掛けて人脈形成をし、自分に目をかけてくれる大物を捕まえる。
夢と希望とアイデアだけあれば誰でも挑戦できる、まさに自由でオープンなアメリカンドリームを具現化している場所シリコンバレー。というイメージとはむしろ対極に位置していると言っていいのかもしれません。そしてこれこそが最も僕が意外だったシリコンバレーの現実でした。
いやぁ、でも本当に行って良かったです。フォーカスすべき内容や投資家の方々の気になるポイントなど、色んな意味でよりAGRIBUDDYの方向性が明確になりました。改めまして、僕のアメリカ滞在中にお時間をいただいたみなさま、本当にありがとうございました。