金利の使い道

カンボジアで通常何かのビジネスを始めようとして銀行からお金を借りる場合、金利は年利で36%(月3%)だ。しかも担保が必要になる・・・これが日本ならもれなく逮捕してもらえる金利だ(笑)
そしてマイクロクレジットもこれにならう形で金利が年利36%、ただし担保を請求しない代わりに超小口貸付に対応する、という方式で行っている。僕がマイクロクレジットを始めるという計画を話したときに、多くの人が『金利を大きく下げるべきだ』とか、『極端な話金利をとらずにやるべきだ』というような意見を言ってきた。
それに対する僕の考えを今から書かせて欲しいと思う・・・
まず『金利36%が高いのか?』という問題に対してだけれど、これは日本の常識を当てはめた場合非常に高く感じてしまうが、視点を変えると実はそうでもないということが言えると思う。
例えばマイクロクレジットを利用する対象になる人々は、現在の収入が月収で100ドルに満たないような人たちだ。よくある経済的な話では、このような人たちには信用リスクが高いので金利が高くて当然だということになる。ところが彼らの返済率から見ても分かる通り、きちんと指導することができれば信用リスクは我々先進諸国に住む人々より遥かに低いことがわかる。
ではなぜそれでも金利が日本を初めとする先進諸国より高いのだろうか?

マイクロクレジット業者は、借主がマイクロクレジットを利用することで、彼らの収入が2倍にも3倍にも(月額200ドルから300ドル)なる事を目標に貸し付ける。すでに高収入を得ている日本人のような人々を対象とする場合、その貸付によって収入を2倍、3倍にすることなんて不可能に等しい・・・
通常我々は借主一人当たり300ドル程度の貸付を行う訳だけれど、その3%である9ドルを1ヶ月かけても稼ぎ出すことが出来ないようなビジネスなら、そもそも彼らにそのビジネスをさせるべきではないだろう。なぜならば、あらゆる人の時間はマネーより希少で大切だから、彼らの時間を月額たったの数ドルのために費やされるわけにはいかないからだ。少なくともビジネスのノウハウを知る我々がコンサルティングをするわけだし、この借入資金を使って月額100ドル以上を新たに稼ぎだしてもらいたい。そうなれば月額9ドルは決して高いと言えるコストではないと思われる。
さらに大切なことは、人々から受け取った金利の使い道だ。
元々このマイクロクレジットビジネスに興味を持ったのも、どうすれば孤児院やフリースクールなどを自立させることが出来るのか、という命題から導きだされた答えの一つなので、基本的に人々が支払った金利でこのような教育機関を運営していく。借り入れによって新たに得た富の一部を、地域に住む子どもたちの将来のために分配してもらう。

カンボジアの場合10村程度の村が集まって、ひとつのコミニューンという行政単位を形成している。そのコミニューン内の人々は概ねお互いのことをよく知っていて、うちの孤児院などもそのコミニューン内に住む貧困家庭(殆どがそうなんだけれど・・・)の子どもたちが通ってきている。このように地域の子供達が通っている教育施設を、貸付の窓口として活用し、子どもたちだけなく地域の大人にもビジネスや金銭に対する情報を発信したり、教育を与えたりする場所にする。そして人々の支払う金利は、自分たちの地域の教育機関(借り入れ窓口)の運営費用に当てられる。
当初は今、僕の支援している孤児院とそのコミニューンで貸付を開始するんだけれど、その後は別のコミニューンでも同じことを同時多発的に進めたいと思っている。その時に必要になるのが、すでにマイクロクレジットのノウハウを持っていて、信用に足るスタッフたちだ。ここに孤児院を卒業する子どもたちの雇用を少しでも増やすチャンスがある。金利の第2の使い道だ。
先日も書いた通り、孤児院やフリースクールの運営はほとんどの人が見よう見まねでやっている。そこに各国からのボランティアの先生などが入ってきたりしているが、教育カリキュラムとしてはかなり微妙なものといわざるを得ないのが現状だ。そこにマイクロクレジットの新たな窓口になる教育機関に出向いたスタッフ(孤児や元学生たち)を通して、しっかりとした教育カリキュラムを提供することが出来るようになる。
うちの孤児院の場合10カ国以上のボランティアが携わっているんだけれど、中には僕の一番親しいスイス人夫婦のように、マーケティング理論を大学で教えているような専門の教育者もいるし、このブログを通して知り合った人々にも、とてつもなく優秀な方々がいるので、いろいろと知恵をお借りすることができれば素晴らしい教育カリキュラムを作っていくことが出来るんじゃないかと思っている。
理想はアジアの僻地の農村でも、日本の最先端の教育が受けられるシステムを作ることなんだけれど、これはかなり話題がずれてしまっているので、また別の機会に・・・(笑)
ちなみに言うと、僕はこのマイクロクレジット事業で1円の利益も収入も取らない。借主から得た金利は、全て上に書いたように教育機関の自立運営資金と、新たな雇用を生むことに直接使用される。
この理由に付いて次回は書いてみたいと思います♪


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金利の使い道」への8件のフィードバック

  1. SECRET: 0
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    私の場合、や大学院修了者の知恵を結集して何かできないかと考える日々です。
    進学する大学院が「環境構成論講座」といて、建築史や都市史なので、多少、インフラと関連しているので、お手伝いできそうな、できないような…。
    あと、私自身、大学院進学のための情報提供、および大学院修了者のための情報提供ネットワークがほしいです。
    KENGOさんが「バーと博士と脳内麻薬」でおっしゃっていたこと、ブログ上で良い方向へもっていけないかと模索中です。

  2. SECRET: 0
    PASS:
    実際のインフレーション率がわかりませんので、36%の金利が高いか低いか一概にはいえないですが、ほかの人より低い金利で貸してしまえば自律経済メカニズムを壊し、長期的には経済を良くしないのは確かだと思います。
    エマージング諸国の場合、政府が提示している金利は現実的ではなく、実際は闇金利だと思うのですが、そこで36%ということは、きっと体感インフレも25~30%程度ですよね。だとすると、インフレ程度の成長がない事業は結果として国を支えることができないことは、実質成長理論でも明確に述べられています。なので、高い金利を払ってもいい投資のみにお金を貸すべきだと思います(ケインズが最も主張していた点でもあります)。
    面倒なことを書いてしまいましたが、KENGOさんのしていることは経済的にも正しいと思います。そして、そこで得た金利を再投資に向けることも、経済成長のため不可欠です。
    正しいことをされているので、ぜひ、頑張ってください!

  3. SECRET: 0
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    >あとりさん
    ブラック銀行・・・名前悪いなぁ(笑)
    マイクロクレジットの根本的な考え方は、どこの団体も共通するものがあるからね♪

  4. SECRET: 0
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    >上村 真衣さん
    せっかく勉強した事を実社会で役立てていく過程が楽しいと俺は思います。いきなりすぐに行動することが出来なくても、例えば上村さんたちが提案してくれたプランを、こちらサイドで実行に移してみるとか、という形からコラボ出来るかもしれませんね♪
    地域のインフラは、自分たちの手で作り育てていくというのが本来の社会のあり方だと思っているので、上村さんたちの学んでいることをどんどんと提供していただけると嬉しいです。
    よろしくお願いします!

  5. SECRET: 0
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    >masahiroさん
    コメントありがとうございます!
    このような意見を待っていました♪
    感覚的に自分の意見が正しいことがわかっていても、正広さんのようなしっかりと学んできた方の理論を聞かせていただけると、さらに勇気百倍です!
    明日は近隣の村の村長30名を集めて、我々のマイクロクレジットのプレゼンをします。
    頑張りま~す!

  6. SECRET: 0
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    >KENGOさん
    いつも、丁寧にコメント返ししていただき、ありがとうございます。
    ●コメントへの返信
    おっしゃる通り、社会に生かそうと試行錯誤する過程、楽しいです!
    今の私では現地に行っても、何もできません。
    まずは「知る」ことから始めようと、記事を読ませて頂いたり、いろいろ分野に首突っ込んで、自分なりに考えている状態です…。
    ●マイクロクレジットのこと
    正直、マイクロクレジットの仕組みはよく分かりません。でも、お金回し方を知るのは生活上、欠かせないことだと考えていますので、少しでも理解できるようにしたいです…。
    ※コメントが長くなりますので、インフラ整備については、また場を改めてお返事致します。
    長々と失礼致しました。

  7. SECRET: 0
    PASS:
    >上村 真衣さん
    現地で何かをすることだけが、活動ではありません。上村さんのように、知ろうとしてくれることや、その上で自分に何が出来るだろうと考えてもらうことも、すでに大きな活動の一部分です。
    知らなければ、考えなければ何も始まりませんから・・・
    ちょっと忙しくてブログがサボリ気味になってしまっていますが、今晩あたりからさらに詳しく書いていこうと思っていますので、ぜひ参考にしていただけるとありがたいです。
    そしてご意見をお待ちしています♪

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