フィフォン物語

さて、今日はカンボジアの文化を知るに当たって、今僕が付き合いをしているフィフォンとダラのこれまでの人生を簡単に振り返ってみよう。

まずはフィフォン。現在彼は27歳、パンという名の『ある方面限定』で有名な兄貴がいる(笑)

実はもう一人パンとの間に兄貴がいたんだけれど、数年前に自殺したそうだ。カンボジアで自殺なんてあまり聞かないけれど、元軍人の親父ポン・セナの躾のあまりの厳しさに元々心の弱かった兄貴がとうとう根を上げて自殺してしまったそうだ。

そのフィフォンの親父ポン・セナ(孤児院の理事長)は政府軍の軍人だった。かなり地位の高い人だったらしく現役当時は2000人以上の部隊を率いていたらしい。現役当時はカンボジアの軍人おなじみの高級木材の不法伐採(というか戦時中なので法律なんて無かったw)でかなり裕福な生活をしていたんだけれど、戦争も終わりポン・セナの所属していたフンシンペック党が野党に下野してからは、冷や飯を食わされて一気に貧しくなった。

さらに悪かったのはポン・セナがシェムリアップの州知事戦にフンシンペック党で立候補し、ほぼ全財産を掛けて闘いに挑んだけれど負けてしまったことだ。何をするにも金がかかるが、金をかけたからと言ってうまくいくとは限らない、これがカンボジアの一面にある現実だ。そして彼らはこれで農地すらも失ってしまうことになる。

実はカンボジアが世界の貧しい国の代表のように言われているけれど、農村部に住む土地を持っている人は少なくとも食う分には困らない。もちろんいいものを食べているわけではないけれど、金が無いだけで米はあるし、森の中に入れば様々な動物たちもいる。昔の日本の農民みたいなものだ。

ところがフィフォンの家はその農地すらなくなった。おかげで彼らは近隣の家の田んぼの手伝いをしに方々を練り歩く、貧困農村の中でも最下層の貧乏家族になってしまった。

この当時銀行なんてものは金持ち相手のものしか無く、農村の土地を持たない家族に金なんか貸してくれるはずも無く(ここにマイクロクレジットの必要性があるのだが)、ポン・セナは村人たちから月利7%(日本の頼母子講のようなもの)という高利で借金をして養豚業を始めた傍ら、絶対に子供には教育が必要だと言って譲らずフィフォンを学校に通わせ続けた。

うちの孤児院に行ったことがある人ならわかると思うけれど、フィフォンはあの赤土の凸凹道8キロを毎日自転車で片道1時間掛けてシェムリアップの街まで学校に通い、それが終わるとお母さんと亡くなった兄貴と一緒に野良仕事、豚の世話、夜は近所の池に魚を取りに行ったりするという日々の暮らしだった。

その他にも自転車でリアカーを引っ張ってアイスクリームを売る仕事もしたことがあるらしい。さすがに身体が持たなくて3ヶ月でヤメたらしいが。

そんなフィフォンに救いだったのは、本人自身勉強が好きだったことだろう。現在はフィフォンとダラに日本語を習いに行かせているが、フィフォンの勉強の仕方は明らかに優等生のそれだ。帰って来たら、いの一番に宿題をやる。暇になったら本を片手にあーだこーだと質問してくる。

勉強好きのフィフォンは学校でもピカイチの秀才君だったようだ。もちろん10年近く前の農村の中に英語を話せるやつなど他にいなかったから、彼がパゴダ(寺院)の中で村人の子供たちに英語を教え、その延長線上で今の孤児院兼無料英語学校が出来ることになったわけだ。

この間にポン・セナの努力も実って借金を返し終わり、養豚も順調に流れに乗って拡大していたのだが、孤児院の運営費用が思いの外かかりまたまた豚の数がドンドンと減っていくことになる。

現実的に今も孤児院の運営費用はマイナスだ。それをカバーするためにマイクロクレジットを一緒に立ち上げているんだけれど、その収益を足しても今のところプラスに成るまでは持って行けていない。引き続き養殖池やその他の事業プランを一緒に推し進めたいと思っている。

と、まぁこんな感じで彼は現在孤児院のディレクターとして外国人との折衝を全て引き受けながら、僕と一緒に自分の力で豊かになりたいと日々がんばっている。

カンボジアを貧しく可哀相な人々が暮らしている助けてあげなくてはならない国だと捉えるのか、こんな時代を乗り越えて必死で勉強してきたやつがゴロゴロしている成長の可能性が高い国と捉えるのかによって、大きな違いがあることだけは確かだろう。

学校で先生がげんこつで頭をコツいただけで新聞沙汰になったりしているどこかの国の子供たちと、こんなふうに働きながらも貪欲に学んできた子供たちが、将来必ず競い合わなくてはならない日が来る。それを避けるために鎖国政策を取るに近いような馬鹿な発言をしている人々が日本に沢山いるけれど、本当にそれでいいのだろうか?

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フィフォン物語」への2件のフィードバック

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    日本の教育も数学に強いとか良い所もあるよ。でも問題は何故勉強するのかとか、何の為にこの答えを導き出すのかとかそういうものすごく根本部分を教えない事かな…。ところで…ダラの話は、まさかコピーの下りで終わりでは無いですよね?(笑) 次号楽しみにしてます。

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